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勝山水菜(北市水菜)
(野菜情報 2013年4月号)



雪深い勝山の地に
 春を告げる
  「勝山水菜」


調査情報部





■ 勝山市の伝統野菜

 勝山水菜は、福井県勝山市で江戸時代から栽培されている伝統野菜です。県内でも降雪の多い勝山に春を告げる野菜として、地元で親しまれています。
 冬場の水田を活用して栽培されており、JAテラル越前勝山南支店の勝山水菜出荷組合では、現在、14人の組合員で伝統の勝山水菜が守られています。同組合の平成23年度の栽培面積は約2.5ヘクタール、生産量は約15トンでした。

■ 勝山水菜の特徴

 水菜というと京野菜の水菜を想像するかも知れませんが、勝山水菜はそれとは異なります。菜種群に属し、春先に出てくる花茎を利用します。茎は太く、一見するとかたそうですが、加熱によりやわらかく、甘みが感じられます。
 栄養面では食物繊維が豊富で、ポリフェノールなどの抗酸化性物質もバランスよく含まれています。また、冬場の野菜であるため病害虫の発生が少なく、ほぼ無農薬で栽培されており、体にうれしい野菜です。

■ 融雪作業

 勝山水菜は、水稲刈り取り後の9月中・下旬に種をまき、雪の下で越冬させた後、新たに出てきた新芽を2月中旬頃から4月上旬頃まで収穫していきます。栽培方法にはトンネル栽培と露地栽培がありますが、JA取扱量の8割はトンネル栽培によるものです。
 越冬後はまず、ほ場の融雪作業から始まります。トンネル栽培の場合、勝山水菜に覆いかぶさった一面の雪を手作業で畝間の通水に落とし、融雪していきます。その後、1月上旬頃からビニールを被覆してトンネルを張り、生育を促進します。多い時は一晩で50センチの積雪になることもあるため、トンネルを張った後も雪の重みでトンネルが潰れないよう、融雪作業は欠かせません。トンネル栽培による生育促進で出荷は早められますが、寒い中での融雪作業やトンネル張りは、生産者にとって一番の重労働となります。勝山水菜の農家のほとんどは、夫婦や家族で栽培を行っているため、これらの作業や収穫作業は一度に行えません。そのため、生産者は様子をみながら各自計画的に作業を進めています。
 なお、露地栽培ではトンネル張りなどの作業が省けますが、収穫時期は3月中旬以降と遅くなり、価格も下がるそうです。

■ブランド化と課題

 勝山水菜は、勝山市内でも集落ごとに受け継がれている系統が異なり、葉形や茎の色の違いなどから、北市水菜、郡水菜、さんまい水菜、平泉寺水菜に大きく分けられます。
 勝山水菜出荷組合では北市水菜が栽培されており、ブランド化に取り組んでいます。栽培地域は北市地区限定で、種は組合役員が採種しており門外不出です。40センチ以上、400グラムをひと束とし、商標である北市のロゴを付してわらで束ね、出荷します。袋やテープではなく、わらを用いるのは、伝統的なイメージを表すためのこだわりであり、オリジナルのロゴ活用とあわせ、他産地との差別化が図られています。
 北市水菜は現在、福井市場や大野市場、地元のスーパーなどへ出荷されています。市場での評価は高く、ほうれんそうの4~5倍という高値で取引されているそうで、冬場の貴重な収入源となっています。
 市場での引き合いが強い北市水菜ですが、課題もあります。栽培地域を限定することで、生産者はプライドを持って栽培に取り組んでいますが、後継者以外で新規に栽培をはじめる生産者はいないそうです。以前は20人以上いた組合員数は、今では半減しており、組合員の平均年齢も70代と、高齢化がすすんでいます。需要に応え、産地を守るためには、今後この問題をどう解決していくかが課題となります。

■ 産地から一言:おすすめの食べ方

 地元では昔から、お浸しや漬物にして食されています。生産者のお話では、勝山水菜を食べていると便秘になりにくいそうです。
 茎は、2~3分ゆでると驚くほどやわらかくなります。甘みもあり食べやすい勝山水菜を、是非一度、ご賞味ください。

○〈「即席漬け」の作り方〉

 ①勝山水菜(200グラム)をきれいに洗い、1センチの長さに切る。②だいこん(20グラム)は千切りにする。③①、②の材料に3パーセントの塩(小さじ1強)を振り、軽く揉んで重しをして一晩おく。

お問い合わせ先、写真:

JAテラル越前勝山南支店

(TEL:0779-88-0341)

 

 
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