ナーベーラー(へちま)
(野菜情報 2012年7月号)
調査情報部
へちまは、タワシや化粧水などに利用されるイメージが強いですが、沖縄ではナーベーラーと呼ばれ、ゴーヤーと並ぶ夏野菜の代表格です。ビタミンやミネラル(葉酸・ヘチマサポニンなど)を豊富に含む美容にも良い夏野菜で、なめらかな食感とまろやかな甘みが食欲をそそり、夏バテ時にも好んで食されています。
ナーベーラーは熱帯アジア原産のウリ科の植物で、高温多湿を好み、沖縄の夏季の気候に適しています。繊維のあまり発達しない品種を栽培し、開花から2週間頃の若い実を食用にします。品種により差はありますが、交配日から数えて、冬場で20~25日、夏場で約10日で収穫できます。
沖縄県中央卸売市場の平成23年取扱量は440トン。県の推計による22年産の作付面積は45ヘクタール、収穫量は1,116トン、直売所などの市場外流通を含めた出荷量は893トンでした。果皮がやわらかいためしなびやすく、冷蔵保存中の冷気や輸送中の衝撃で黒ずんでしまうなど品質維持が難しいため、県外への流通は少ないようです。
ナーベーラーの旬は7~9月ですが、施設栽培の普及により作型が分化し、1年を通して栽培が行われています。収穫期間は4~6ヵ月間と、長期にわたる収穫が可能です。栽培期間中に台風が上陸することが多く、生産が不安定な状況でしたが、防風ネットのべたがけによる対策で、安定供給が図られつつあります。
ナーベーラーは南風原町での生産が多く、かぼちゃとの輪作が行われています。JA南風原支店によると、管内の平成23年度生産者数は34人、作付面積は4.7ヘクタール、出荷量は64トンでした。
南風原町では、種子はほぼ自家採取されています。農業研究センターでは、各地からヘチマの種子を集めて優良品種の選抜を行っています。また、ナーベーラーは比較的病害虫に強いですが、地域特産的作物であるため使用登録されている農薬が少なく、病害虫対策などの課題があります。
南風原町の神里さんは、ナーベーラー栽培歴45年のベテラン生産者です。栽培はご夫婦二人で行っており、約33アールのほ場で年間10トンを出荷しています。ナーベーラーの変色を避けるため、夏場は朝10時までに収穫し、午前中には出荷作業を終えています。また、交配はすべて手作業で行っています。自然交配ではムラができてしまうため、手作業で確実に交配させています。冬場は風除けにトンネルをかけますが、トンネル内での中腰の作業が一番大変だそうです。
ほ場の様子
収穫を待つナーベーラー
ナーベーラーの出荷先は、主に沖縄県内の総合スーパーや直売所、病院などです。JA南風原支店と南風原町では、平成21年度から地産地消の取り組みとして、学校給食への利用を進めています。
県外では食用としての認識が薄いへちまですが、南風原町では、ナーベーラーの県外出荷に取り組んでいます。イメージアップとブランド化を図るため、町の広報やHPで南風原産ナーベーラーの新名称を募集して、平成24年2月、「はえばる
ナーベーラーは、調理すると実はトロッと、種もやわらかくプチプチした食感になります。また、水分がたくさん出てくるので、水を加えずに煮物に用いることができます。沖縄での伝統的な食べ方は、ナーベーラーンブシー(へちまの味噌蒸し煮)や炒め物、汁物の具ですが、普及センターでは、若い方にも受け入れてもらえるようなレシピを、農家や高校生と一緒に考案しています。
今年の夏は、美容と健康によい「はえばる美瓜」を、ぜひご賞味ください。
①ナーベーラー(太め1本)は、ピーラーまたは包丁でこそぐように薄皮をむき、1.5~2センチ程度の幅に切って塩・こしょうをふる。②フライパンにクッキングシートを敷いて中火にし、ナーベーラーを並べ入れ、ふたをして片面を1~2分程焼く。③②を裏返してとろけるチーズとスライスしたウインナーをのせ、さらに1~2分焼く。※オーブンで焼いてもOK!
ナーベーラーンブシー
チーズのっけほか調理例
お問い合わせ先:沖縄県農林水産部南部農業改良普及センター
(TEL:098-889-3515)
写真提供:沖縄県農林水産部流通政策課、㈳沖縄県栄養士会