大和まな
(野菜情報 2012年6月号)
調査情報部
大和野菜とは、奈良県の特産品として特徴のある「大和の伝統野菜」と「大和のこだわり野菜」のことで、奈良県が平成17年10月から認定をはじめ、平成24年4月1日現在、23品目が認定されています。このうち「大和の伝統野菜」は、戦前から奈良県内で生産が確認されている品目で、地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法等により、「味、香り、形態、来歴」などに特徴をもつものです。
中国から渡来したアブラナ科のツケナ(漬け菜)は、奈良時代初期に書かれた「古事記」に「菘」と記載があるように、わが国の中で最も古い野菜のひとつとされており、その後、全国に広まり各地に独特の品種が成立しました。そのひとつの「大和まな」は原始系に近い品種とされ、葉は大根葉に似た切れ込みがあり、濃緑色で、肉質は柔らかく甘みに富んでおり、食味は寒さや霜にあたると甘みを増すのが特徴です。かつては油採り用に栽培されていました。
奈良県では、この「大和まな」を平成17年10月に「大和の伝統野菜」として認定しました。主な産地は、宇陀市、大和高田市、五條市、奈良市などで、大和野菜として認定されることで、専業農家の生産技術が向上し、流通量が増えています。
「大和まな」は、収穫後、葉が黄変しやすく、店頭での日持ちの悪さが生産拡大の課題となっていましたが、県ではこの課題を解決するため、平成18年から産学官連携による奈良県地域結集型研究開発プログラムにおいて、ナント種苗株式会社、奈良先端技術大学院大学、奈良女子大学および奈良県農業総合センターとの共同研究の結果、平成21年に収穫後の黄変等の問題を改善したふたつの新品種を育成することができました。平成22年6月、農林水産省に品種登録出願し、平成23年9月に「夏なら菜」が、平成23年10月に「冬なら菜」が品種登録されました。
「夏なら菜」は株張りが良く春から夏栽培に向く品種、「冬なら菜」は低温でも生育が良好なので秋から冬栽培に向く品種であることが特徴で、この2品種の組合せにより周年生産が可能になりました。また、ほうれんそうの連作障害を解消するために輪作体系に取り組む動きなどもあり、奈良県では「大和まな」の生産と消費の拡大に力を入れています。
「冬なら菜」の栽培風景
収穫した「冬なら菜」
油揚げなどとの煮浸しは相性がよく、地元の家庭料理として親しまれています。しゃきしゃきとした食感や癖のない食味で様々な料理に合い、ほうれんそう、小松菜などと同じように料理でき、炒め物、鍋、サラダと料理全般に使えます。また、ベビーリーフとして利用できます。
大和まなのじゃこ炒め
①大和まな(4株)は葉と軸の部分に分け、葉も軸も3cm幅に切る。②油揚げ(2枚)は長さ3cmの細切りにし、電子レンジでカリッとするまで約3分間加熱する。③フライパンにサラダ油(適量)を入れて加熱し、ちりめんじゃこ(30g)と大和まなの軸を炒める。全体に油がなじめば、葉の部分と合わせ調味料(酒45mℓ、砂糖大さじ1/2、オイスターソース大さじ1、濃口醤油5mℓ)を加え、水分を飛ばすように炒める。仕上がる直前に、油揚げを加えて炒める。④③をバットに広げて斜めにし、余分な汁気をきる。
大和まなと卵の炒めもの
お問い合わせ先:奈良県農業総合センター 普及研修部普及技術課
(TEL:0745-82-2340)
料理作成/レシピ提供:大阪あべの辻調理師専門学校