雪嶺茸(ゆきれいたけ)
(野菜情報 2012年5月号)
調査情報部
雪嶺茸は、スイスやイタリア、フランス、モンゴル地方の森や草原に自生するヒラタケ科のきのこで、JAS法に基づく和名は「バイリング」です。
中国では「神茸」や「西方白霊芝」と呼ばれ、昔から薬膳料理に用いられていて、免疫力を高める効果があるといわれています。また、平成15年8月に行われた「日本応用きのこ学会」では、高崎健康福祉大学の江口教授により、高脂血症に対する改善効果や高血圧降下作用、肥満抑制効果、糖尿病の改善効果などが発表され、成人病の予防に期待が寄せられています。
以前は中国から輸入されたものが一部流通していましたが、10年ほど前から日本国内でも栽培されるようになりました。
真っ白で大きな外観が目を引く雪嶺茸は、何といってもその食感が特徴的です。肉厚でやわらかな食感は、火を通したアワビのようで、うまみがぎゅっと詰まっています。
低温栽培のため生育日数は約3ヵ月と、他のきのこよりも長めです。とてもデリケートで、少しでも触れると変色してしまいます。栽培作業中は雪嶺茸に触れないよう注意が必要で、手間暇をかけてきれいな純白色に育てていきます。
福岡県三潴郡大木町は、えのきやしめじ、椎茸、エリンギなど、きのこの栽培が盛んな地域です。JA福岡大城管内のきのこ部会では、10年前の平成14年から、いち早く雪嶺茸栽培に取り組んでいます。
同きのこ部会は、以前からJAと一丸となって勉強会を積極的に行っており、総合的なきのこ産地を目指すにあたり、新しいきのこの開拓の必要性を感じていました。日本ではまだ珍しい雪嶺茸は食べてみるととてもおいしく、収益性も望めるのではないかと、雪嶺茸栽培への挑戦をはじめました。
雪嶺茸の栽培は技術的に難しく、悪戦苦闘の日々でした。菌床での栽培はうまくいかず、ポット栽培に変更。種菌は、大城町きのこ種菌研究所で品種選抜を行っています。昨年までは、栽培過程において小さいものを間引きし、1ポットにできる個数を限定していたため、生産性が低く、また間引き作業中は雪嶺茸に触れやすいため、規格外品も多く産出されていました。しかし、優良品種の選抜により、間引かなくても大きく生育する個数が自然に限定できるようになり、当初は1ポット50グラムしか生産できなかったものが、現在は倍の100グラムを超えるほどに、生産性は高まりました。
平成23年度の出荷量は5トンでしたが、平成24年度の出荷計画は10トンに増量されます。間引きをしなくなったことにより小ぶりの雪嶺茸も収穫できるようになったため、これらを直売所で安価で販売しています。これにより、それまでは興味を持って手にしても購入には至らなかった消費者にも、試しに食べてみようと購入してもらえるようになり、雪嶺茸の評判が徐々に広まっています。また、部会では県内での試食宣伝や市場へのサンプル出荷を行っているほか、JA全農ふくれんでも県内、県外を問わずイベントに出展するなど、販促活動に取り組んでいます。
技術的に安定的な供給が難しかった雪嶺茸ですが、ようやく生産性が安定し、量産体系が整いました。次の目標は、販促活動などにより販売力を高め、より多くの方々に雪嶺茸を味わってもらうことです。
栽培風景
収穫前の雪嶺茸
雪嶺茸は味や香りにクセがないので、和食・洋食・中華など、どんな料理にもアレンジできます。1センチ程度にスライスしてバターで炒めれば、お手軽でおいしい1品になりますし、煮込み料理に用いると味に深みが増します。また、天ぷらにして味わうのもおすすめです。
アワビのような食感で、旨みがたっぷり詰まった雪嶺茸を、ぜひ、ご賞味ください。
雪嶺茸シチュー
①雪嶺茸(200グラム)は4~5ミリの厚さに切り、ちんげんさいは下ゆでをする。②フライパンを熱し、サラダ油でねぎ、しょうがのみじん切りを炒める。③②に水(200cc)と雪嶺茸を入れ、中華スープの素(小さじ0.5)、オイスターソース(大さじ2)、砂糖(大さじ0.5)、濃口醤油(大さじ0.5)を加え、2~3分煮込む。④器に雪嶺茸とちんげんさいを盛り、残った煮汁に片栗粉でとろみをつけ、最後にごま油を入れ香りをつけ、かける。
雪嶺茸の中華煮込
お問い合わせ先:JA全農ふくれん
園芸部園芸販売課(TEL:092-762-4744)