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「仙台白菜」(野菜情報 2012年1月号)



仙台の復興を願う
    “仙台白菜”


調査情報部





■仙台の伝統野菜「仙台白菜」

 白菜が中国から日本へ伝来したのは明治時代で、大正時代には宮城県で日本の白菜の原型のひとつと言われる「松島白菜」が誕生しました。そしてこの「松島白菜」をもとに「松島純二号」や「松島新二号」などが育成され、宮城県は白菜出荷量日本一を誇る大産地になっていきました。宮城県内で栽培された松島系品種の白菜は中身が白く柔らかで甘みも強く、「仙台白菜」というブランド名で全国にその名をとどろかせました。しかし、戦後、雑交配による品質低下や東京近郊産地の勢力が伸びたこと、また、害虫や病気に弱いという栽培上の難点があり栽培しやすい新しい品種に移行していったことなどにより、伝統野菜といわれる「仙台白菜」の栽培は減少していきました。

■東日本大震災の復興の糧に

 2011年3月11日の東日本大震災により、被災地では物のあふれた現代にもかかわらず物がなくなるという事態が起こりました。野菜も店頭から姿を消し、作りたくても作れない、食べたくても手に入らないという状況に直面しました。このような経験を踏まえ、生産と消費の関係を再認識し、「早期の農業復興」を願ったJA全農みやぎと、消費者の立場から「食べて復興を応援したい」と考えていたみやぎ生協の思いが一致し、本年6月、「みんなの新しいふるさとづくりプロジェクト」が立ち上がりました。

■「みんなの新しいふるさとづくりプロジェクト」

 このプロジェクトは、農業再興・生産振興によって宮城県全体を盛り上げ震災復興につなげようというもので、JA全農みやぎとみやぎ生協が県内の高校生とともに「仙台白菜」の生産・販売に取り組んでいます。
 数ある野菜の中でも白菜を選んだのは、仙台白菜が仙台に古くからゆかりのある伝統野菜であり、塩害に強く被災地でも栽培が可能であるためです。このプロジェクトでは本来の伝統野菜である「仙台白菜」を復活させるとともに、現在県内で一般的に栽培されている白菜についても同時に推進していくことを目的としているため、伝統品種236アール、慣行品種520アールの計756アールの作付を計画しました。生産は、被害の大きかった沿岸地域を含む県内のJAに加え、以前から伝統品種の栽培に取り組んでいた私立明成高校や被災した宮城県農業高校の生徒らにより、8月には種、9月上旬に定植が行われ、11月から随時収穫されています。このプロジェクトで生産された白菜は、みやぎ生協を基本に出荷されますが、事前に販売先が確保されていることで生産への意欲が強まったそうです。
 また、高校との連携により食育・食農教育も兼ねた取り組みとなっており、県内の小学校などで仙台白菜の歴史を紹介したり、販売会などのイベントでレシピの提案を行うなど、地域に浸透しやすい活動内容にしました。そうすることで、みんなで新しいふるさとを作っていこうという県全体の取り組みとなり、地域の活性化にもつながると考えています。
 今後の課題は、伝統品種は結球が弱く、これら規格外品の活用方法を検討することで、現在、試験的に餃子を試作しています。また、今後は白菜以外の品目についても取り組んでいく予定です。

■産地から一言:おすすめの食べ方

 宮城県では昔、冬の野菜の供給源として「仙台白菜」を大きなたるに漬け込み、ひと冬かけて食べていたそうです。昔ながらの漬物はもちろんですが、カレーの具材に白菜を用いたり、キャベツの代わりに白菜を用いたロール白菜など、洋風のアレンジもおすすめです。
 「みんなの新しいふるさとづくりプロジェクト」により作られた「仙台白菜」には、戦前使われていた荷札のデザインを元にしたロゴマークが付いています。このマークを見かけたら是非手にしていただき、仙台の復興を祈りながら味わいたいですね。

「仙台白菜カレー」

プロジェクトのロゴマーク

お問い合わせ先:JA全農みやぎ 営農企画部 (TEL:022-264-8375)

写真提供:JA全農みやぎ

 
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