横浜事務所
神奈川県では横浜、川崎など大都市近郊では、かつて、畑作地帯で野菜の産地であったが、都市化の進展とともに次第に農地が減少し、丹沢や多摩川の水と相模の大地に育まれてきた伝統ある野菜が消えつつある。
しかしながら、最近における「地産地消」運動の盛り上がりとともに、地方の伝統野菜が見直されてきている。このような中で、神奈川県下の野菜・種苗関係者が中心となり、急速に消えつつある伝統的な野菜を見直し、後世に伝えていきたいとして、「かながわの地方野菜」を3月に出版した。
神奈川の県種苗協同組合、県農業技術センター、JA中央会等の関係者で構成する「神奈川県園芸種苗対策協議会」(横浜市磯子区、三好吉清会長)が企画編集した。執筆は県農業技術センター職員を中心に県園芸協会、県種苗組合の関係者による。
本の構成は、第1話として「伝統的野菜の具体的な紹介」、第2話として「神奈川県における野菜主要品種の変遷」、第3話として「野菜に関する農業・農政のあゆみ」から構成されている。その中で、第1話では、「三浦ダイコン」をはじめとする18品目29品種の伝統的野菜について、品種の名称・来歴、品種の特性、生産の現状、採種、栽培上の課題、その野菜が果たした役割、加工・調理法、その他特記事項がそれぞれ具体的に既述されている。
神奈川の野菜は、数百年という歴史を持つ京都や大阪のような長い歴史はなく、明治以降に育種されたものが多い。そのため、記録が比較的残っており、育種の流れや育種に関わった人たちの状況が具体的に記述されており興味深い。相模の地で育まれた伝統的野菜の詳細が理解できることは勿論のこと、その品種を育てた先人達の知恵や加工・調理法などからこの地での食文化も垣間見ることができる。
今後の食育や地産地消を推進する上で、非常に貴重なテキストになると思われる。
今後、全国各地において、同様の図書が出版され、日本の農業・食文化の発展に資することが期待される。