札幌事務所
平成17年12月9日、札幌エルプラザにおいて、札幌消費者協会と当機構札幌事務所の共催により「食生活と健康に関わるセミナー」を開催した。これは、食育の推進を目的として、広く消費者の方々に、食生活の中での農畜産物の正しい知識や摂取方法に対する理解を深めてもらうために実施したものである。
セミナーは二部構成で、第一部では天使大学教授の荒川義人氏が「健やかな食生活と健康について」~農畜産物の正しい知識や摂取方法~と題して、第二部では日本中国料理協会北海道地区本部長の石浦恵三氏が「中国料理から見た栄養表示について」~食での栄養表示の現状~と題して講演を行った。
第一部「健やかな食生活と健康について」では、日本人の平均寿命が肉類、乳製品などの動物性食品の増加とともに伸び、世界トップの座を維持するまでになったことを紹介した上で、生涯を通して健康に生きるために食生活の大切さを考えてみようと以下の内容を講演した。まず、栄養の現状について、(1)若い世代では食物繊維、カルシウムが不足し、脂肪を摂りすぎている傾向にあり、一方、中高年世代では、塩分の摂りすぎの傾向にあること、(2)栄養分の摂り方は、量とタイミングが重要であること、(3)食材、調味料を見直し、認識して対応することで改善できることを説明した。また、例として緑黄色野菜のトマトは有機質肥料100%で育てたものはアミノ酸やビタミンC、リコペンの含有量が多く、さらに完熟してから収穫したものではよりアミノ酸などの栄養価が高いこと、ほうれんそうでも以前に比べてビタミンCの含有量が減少していること、露地栽培のものはハウス栽培のものよりもビタミンC含有量が多く、栽培方法や時期、鮮度でも栄養価が異なることから、地産地消や旬の味、本物の味が栄養学的、科学的にも大切であることを訴えた。最後にまとめとして、一つの食材や栄養素に偏らず、食材を組み合わせることが大切であり、米などの穀物を中心に、肉、野菜などを加えた、日本型食生活を取り戻すことを目標として欲しいこと、また、みんなで食について考える場所、空間を持つことが食育のできる環境作りにつながるだろうと呼びかけた。
続いて、第二部の「中国料理から見た栄養表示について」では、食事は命を支えるものであり、食事で健康を保っていこうとの観点から、1日30品目を摂ることが大切といわれる中で、中国料理はさらに(1)食品同士の相性、(2)季節、旬のもの、(3)自分の体質に合うものという点を重視しており、医食同源の思想に基づいた理にかなった料理であることを述べた。一例として酢豚を挙げ、その食材の栄養成分に加え、パイナップルが消化を助ける働きを持つこと、調味料である黒酢のアミノ酸による効果が注目されていること、隠し味である砂糖が脳のエネルギー源であることを説明した。また、石浦氏の勤務する札幌ロイヤルホテルでの取り組みとして、北空知の農家との契約栽培により栽培された野菜を使用していること、メニューに栄養成分表示、カロリー表示をしていることなどを紹介し、お客様の要望にこたえてこそ調理人であると考えているとの意見で締めくくった。(菊池)