[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

地域だより


発展する農産物直売所(JA兵庫六甲)

独立行政法人 農畜産業振興機構
大阪事務所


 近年、全国各地で農産物直売所の設置が増加している。神戸市を含む兵庫県南東部をエリアとするJA兵庫六甲においても、都市近郊農業の特性を生かし、農産物直売所を展開している。神戸市西区に昨年11月に設置された直売所「六甲のめぐみ」(売場面積:約800m2)は、大都市郊外という地の利を生かし、順調に売上を伸ばしている。

 この直売所「六甲のめぐみ」は、昨年度11月27日から3月末日までの営業で3億円弱の売上となっており、今年度は10億円の売上が見込まれている。具体的に今年8月前半では、売上高5,533万円、来店者数2,156人/日、出荷者数254人/日、出荷者1人1日当たり11,535円となっており、店舗としては順調な売上げとなっている。

 野菜の出荷は、依然として青果市場への出荷が主流であり、一定の規格や一定以上の出荷数量などが求められており、専業農家・営農集団による積極的な展開が行われているところである((参考)16年度JA兵庫六甲青果物仕向け割合:市場向け54.0%、直販所向け31.3%、量販店等向け直接販売14.7%)。しかしながら、農家の高齢化や都市近郊の特徴としての農地の減少などにより、市場出荷に対応できなくなった生産者も多くなってきており、このようなことから農地の耕作放棄化が懸念されているところである。

 このような中で、農産物直売所への出荷は市場出荷に比べ、
(1) 量的に多くを出荷できないが、トレー1個のような非常に小口でも出荷可能である
(2) 必ずしも規格にこだわらなくても良い
(3) 出荷経費などがかからないことから、利益率も高い
(4) 出荷時期は生産者の都合で決めることができる
(5) 消費者の反応が直接生産者に返ってくる
などの利点があることから、市場出荷に対応できなくなった生産者にとって大いに利用でき、好評を得ている。

 現在、当該直売所に出荷している生産者(642名が登録)は、当該JAによると、市場出荷ができないような非常に零細規模であり、認定農業者制度の認定基準からみるとほとんどが下回ってしまうとのこと。その生産者らの出荷額が年間10億円と見込まれることは、農産物直売所の存在意義は非常に大きいと思われる。現に一旦耕作放棄しながら、昨年農産物直売所が設置されたことにより、再度野菜作りを始めた農家が出ているとのことであった。



直販所「六甲のめぐみ」


大勢の買い物客でにぎわう店舗内


 


 



 


(生産者氏名、価格の入ったラベル。ラベルは予め生産者自ら貼付)


 




 しかしながら直売所での販売には、生産者にとって、
(1) 消費者の反応が直接返ってくることから、農産物の安全・安心対策にも一層心掛けなければならない
(2) 販売出来なかった青果物は本人引き取りしなくてはならない
などの課題がある。

 また、設置者にとっては、
(1) 直売所従業員の人件費を最低限確保しなければならない
(2) 「地産地消」がおおむねの原則となっている農産物直売所であるが、季節・自然条件等から当該地域で生産が困難な農産物を消費者が求めていることへの対応が必要
(3) 系統出荷と違い、品揃えをJA自ら行わなければならない
などの課題もある。

 このため、JAでは、新鮮な野菜・地産地消を推進すること旨として、
(1) 安全・安心の確立のために、
 1)生産者に生産履歴記帳の研修会に複数回参加させることを義務化し、生産履歴記帳を徹底させる
 2)残留農薬分析体制の強化と表示適正化の推進する
(2) 品揃えのために、「めっけもん広場」等の他地域の直売所との連携・ネットワーク化を進める
(3) 六甲野菜ブランド作りを積極的に進める
などの対応を図っているところである。

 このように農産物直売所については、きめ細かな対応が求められるが、「地産地消」の推進に加え、利益率が高く・随時の小口出荷が可能である等から、高齢者・零細農家による出荷先として、今後も発展が期待される。


―――――(高橋)


 


元のページへ戻る


このページのトップへ