[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

地域だより


「野菜から"食"を考える」フォーラムが京都で開催

独立行政法人農畜産業振興機構
大阪事務所


1 はじめに

 平成16年11月7日(日)に、地球女倶楽部INANNA主催、農林水産省近畿農政局、(独)農畜産業振興機構ほか6法人後援による「野菜、万菜、文化菜」が京都府女性総合センターで開催され、野菜から"食"を考えるフォーラムが行われた。

 地球女倶楽部INANNAは、働く女性の知性と感性を磨くために、地域、職業、年齢を超えて相互に交流し、しなやかに向上するための団体として、15年前に設立された。その団体が、今年は「野菜」をテーマにフォーラムを開催した。

 当日は、(1)講演・シンポジウム、(2)特産野菜の展示、(3)試食コーナー、(4)沖縄野菜のバイキング、江戸野菜の試食、滋賀県愛東町アンテナショップ、(5)野菜の写真展、絵手紙教室の催しが開催され、多数の働く女性とそのサポーターである男性たち、総勢おおよそ500人が参加した。

2 基調講演 

 まず、基調講演として、民族学者の神崎宣武氏が「野菜が語る日本文化」と題して講演を行った。その内容は、以下のようなものであった。

 「野菜」の定義が各国違うので必ずしも単純に比較できないという前提はあるものの、野菜の消費統計によれば、日本は諸外国と比べて多くの野菜を消費しており、山菜などを含めれば統計の数値よりさらに多くなる。その理由を神崎氏は、国土のほとんどが山岳地形で降水量が多いため、山野に植物が豊富であったとし、そこから結果として、日本の食文化は、山菜を食べることから始まり、その後日本独自の野菜を栽培して、これまでに発展してきたのである、と述べた。

 最後に神崎氏は、日本人はもともと野菜の消化に適した腸の構造をしているが、食生活の欧米化とともに、大腸癌が増加してきており、日本の食文化の意味をもう一度問い直す必要があるのではないか、と提言した。

3 シンポジウム

 

 
シンポジウムの様子



 続いて、絵本作家の永田萌氏、料理研究家の坂本廣子氏、京野菜生産者の樋口昌孝氏、コーデイネーターとして地球女倶楽部INANNA副会長の湧川ふき子氏が参加してシンポジウムが行われた。以下、パネリストの主な発言についてまとめた。

 最初に絵本作家の永田は、"実家が兼業農家ということもあり、子供のころから畑で野菜を採り食べていた。今は、野菜の花の絵を描くことが多く、皆さんから「なつかしい」絵といわれる。田舎での体験が私にとって非常に重要だった。"と述べた。

 次に料理研究家の坂本氏は、"神戸育ちで農村を知らないが、子供の出産を機に「野菜の共同購入」を始めた。しかし、最初は食べきれず、どうやって食べてよいか勉強会を行った。これが新聞に掲載され、最終的に本になったことが、料理研究の道を開いた。さらに、自分の子供と一緒に調理するようになったことをきっかけに、幼児を対象とした調理教室・食育活動へと発展した。

 今の子供たちは、野菜嫌いと言われているが、自分の経験から言うと、"知らない・経験がない"から食べないのであって、教え・体験させれば、必ず野菜を食べるようになる。野菜離れの一つの要因は、供給側の情報提供の仕方に課題があると考えられる。例えば、学校(給食)では、食中毒のこともあり、野菜を食べる場合は必ず1分間・75℃の湯を通さなければならない規則になっていて、茹でた野菜でないと食べさせられない。本来は生で食べた方がおいしい野菜までも、湯に通し、わざわざまずくしているのである。

 また、子供たちに「農業」をテーマした絵を描かせてみると、多くの子供が白紙同然で、ほとんど描けなかった。この原因こそ体験がないからで、子供たちにスーパーなどで売っているカットされた野菜を見ても本来の野菜を理解することはできない。やはり、畑で育っている様子を見せ、食べ物について正しい知識を教える必要がある。このままでは、野菜の消費が拡大するとは思えない。"と述べた。

 続いて、京野菜生産農家の樋口氏は、"400年・14代続く農家であり、京の伝統野菜、特においしい野菜の種の保全にこだわり続けている。種の保全というのは、天候・土壌の変化などがあるので、大変である。その中で、京野菜が存続してきた理由の一つとして、お客からの'おいしい''まずい'という声を直接聞くことが可能な「振り売り(行商)」による地産地消という京都の伝統が関係しているのではないかと考えている。

 さらに、最近の子供の野菜嫌いに関しては、坂本氏が指摘することも生産者として反省すべきところである。"と述べた。

4 その他

 

 
特産野菜の展示の様子



 その他、特産野菜の展示があり、京の伝統野菜(みずな、加茂なす、伏見とうがらし、金時にんじん、鹿ケ谷かぼちゃ、聖護院だいこんなど)、なにわの伝統野菜(みずなす、毛馬きゅうり、勝間なんきん、田辺だいこん、天王寺かぶなど)、江戸野菜(こまつな、練馬だいこん、千住ねぎなど)、沖縄野菜(パパイヤ、ゴーヤなど)、近江野菜、米粉パンの展示・販売が行われた。

 また、試食コーナーなどでは、おばんざい(お惣菜)の試食、沖縄野菜のバイキング、江戸野菜の試食、滋賀県愛東町アンテナショップでは、有機野菜などの試食とその地域紹介などが行われた。

 最後に、野菜の写真展、絵手紙教室コーナーでは、種苗会社からの野菜の花写真の展示、プロの画家(寺田みのる氏)による葦紙と葦ペンを使った絵手紙指導などが催された。



元のページへ戻る


このページのトップへ