独立行政法人農畜産業振興機構
横浜事務所
平成16年10月7日(木)、横浜市横浜第2合同庁舎において、独立行政法人農林水産消費技術センターなどの主催により、第2回共同ワークショップ「農産物の安全・安心の取り組み~農場から食卓まで~」が開催された。
これは、昨年7月に食品安全基本法が施行され、わが国の食品安全行政の仕組みが大きく変化したことに伴い、同消費技術センターが食品に関する各種の調査分析を通じ、リスク情報の把握に努め、科学的観点から一般消費者に情報発信するなどの事業を展開しているところであり、同事業の一環として開催されたものである。
当日は、基調講演の講師に相模女子大学短期大学部食物栄養学科金井美恵子助教授を迎え、その後行われたパネルディスカッションには、行政、消費者、生産者などそれぞれの代表者がパネリストとして参加し、討論を通じて行政の施策や農産物の安全・安心の取り組みについて紹介した。
以下、基調講演の概要およびパネルディスカッションで紹介された取り組みについて紹介する。
食品による危害
一般消費者にとって、かつての不安要因の大きなものは細菌などによる食中毒であったが、現在は、それに加えてBSE問題、鳥インフルエンザウィルスなど感染症に対する関心が大きなものとなっている。
また平成15年の食品安全委員会の調査結果によると、食品の安全性の観点から、不安を感じているものについて、国政モニターは農薬、食品添加物を挙げているが、食品の専門家といわれている食品安全モニターも農薬、食品添加物を挙げるとともに輸入食品、健康食品、飼料、機具・容器包装も同様に挙げており、この結果から農薬や食品添加物に対する不信感は根強いものがある。
しかし、1日摂取許容量「ADI(Acceptable Daily Intake)」を守れば、農薬および食品添加物を毎日摂取しても、人体への影響はないと考えられている。
食品安全基本法
BSE問題や偽装表示の問題など食の安全・安心に対する国民の不安が高まる中で、政府は食品安全基本法を平成15年5月に制定し、同法に基づき食品安全委員会を発足させた。同法の基本理念は、「国民の健康保護を最優先とする食品の安全措置」、「食品供給行程の全ての段階での安全性確保」、「国際動向および国民の意見に配慮しつつ、科学的知見に基づいた安全の確保」である。
また、国、地方公共団体、食品関係企業の責務や消費者自身の役割も明記されており、消費者としても、食品の多くを輸入している我が国の現状を踏まえ、農薬、食品添加物などに対し、国際的安全性、知見について適切に対応していく必要がある。
パネルディスカッション
横浜中央卸売市場の青果卸売業者は、平成12年~13年の始めにかけて中国野菜の輸入急増、好天による供給過多により、価格が暴落した際に、流通履歴などを付加価値とし、販売価格に反映できないかと考え、JA、農業資材、市場、物流ITシステム、小売、外食、食品加工の各担当者の協力を得て「青果物EDI協議会」を設立した。それ以来、RFID(Radio
Frequency Identification: 微小な無線チップにより人や物を識別・管理する仕組み。)を活用してICタグに品質履歴データを書き込んで流通させるという情報システムの開発に取り組んできた。
また、生鮮食品のトレーサビリティシステムについても開発がなされている。これは、ICタグの出入荷時のデータ読み取り・読み出しのほか検品、分荷処理、輸送車両への配送指示などの情報を、小売店店頭でバーコードリーダーを使って読み取るだけで、青果物の流通履歴が瞬時に分かるものである。現在も実用化に向けての取り組みが続けられているが、システム導入におけるコストの問題や個体識別の単位をどう決めていくかなど、取り組むべき課題は多い。
この他、神奈川県は、県民に対し情報提供、意見募集などを行う観点から、一般消費者の食に関する疑問や相談に答えるために、今年7月に「神奈川食の安全・安心ダイヤル」を開設するとともに、今後ホームページを通じて、わかりやすい情報提供を行っていきたいとしている。