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地域だより


横浜市鶴見福祉保健センターが「食の安全・安心を考える」シンポジウムを開催

独立行政法人農畜産業振興機構
横浜事務所


 平成16年7月21日(水)、横浜市鶴見区の鶴見公会堂において、「食の安全・安心を考える」シンポジウムが開催された。これは、横浜市が策定した「平成16年度横浜市食品衛生監視指導計画」に基づき、市内各区の福祉保健センターの主催により開催されているものである。同シンポジウムは基調講演とパネルディスカッションで構成され、基調講演は(財)日本冷凍食品検査協会顧問の森田邦雄氏(前厚生労働省東京検疫所長)を迎えて行なわれ、パネルディスカッションには行政代表として横浜市衛生局食品衛生課長、消費者代表として鶴見区食生活等改善推進員会会長、鶴見区消費生活推進員区代表、食品業界代表として鶴見区食品衛生協会会長、製菓業界代表の計5名がパネリストとして参加し、討論を通じて行政の施策や食品産業界の取組みについて紹介し、参加者への理解を求めた。

 ここでは、基調講演「食品の安全性と消費者」の概要を紹介する。

消費者が食品に求めるもの

 現代の消費者が食品に求めるものとは、まず美味しさ、次に健康、そして価格だと考えられる。これに安全・衛生、安心を伴うことにより食品に対する信頼が初めて生まれると考えている。

 今回のテーマである"安全・衛生"と"安心"の違いを一言で表すならば、前者は科学に基づくもの、後者は心理的なものと言える。科学に基づき安全・衛生を証明し、それを消費者に納得してもらい安心感を得てもらうことにより、信頼に結びついていくと考えている。

消費者の食の安全性に関する意識調査

 消費者の食の安全性に関する意識調査について、大手新聞社及び東京都などが最近行った意識調査の結果を紹介しながら進められた。最近、食の安全性について不安を感じているかについては、「大いに感じている・多少は感じている」と回答した人は約80%であった。これは他の同様の調査でも同じような割合であり、具体的にはBSE、鳥インフルエンザなどの問題について不安を感じていると回答する消費者が多かった。

 また、国の食品行政を全体として信頼しているかについては、「大いに信頼している・多少は信頼している」と回答した人は約50%であり、他の同様の調査結果に比べると若干高い。これは、日米BSE問題で全頭検査を含む日本と同等の措置を米国に求めている日本政府の姿勢に同調する消費者が少なくないことによるのではないかと考えられる。

 食品の安全性を高めるためにどのような対策が必要か(複数回答)については、安全性に対する生産者やメーカーによる意識の向上((57%)、生産や加工から販売までの情報公開の促進(51%)、食の安全に関する法律違反への罰則強化(51%)、安全性に対するスーパーなど販売店による意識の向上(48%)、行政による監視や検査体制の充実(45%)などが高い割合となっている。

 BSE問題発生以降、食に関する意識・行動が変わったか(複数回答)については、食の安全に関する情報について注意するようになった(96%)、安全性が問題になった食材や食品を避けるようになった(77%)、輸入食材・食品は生産国を確認するようになった(85%)、自宅で料理したものを食べるようになった(61%)などが高い割合となっている。一般的に消費者は国産品に対する安心感、輸入品に対する不安感を感じていると考えられる。

 食材や食品購入について心がけていること(複数回答)については、消費期限や賞味期限に余裕があること(75%)、信頼できる生産地・生産者・製造者であること(70%)、食品添加物が少ないこと(61%)、信頼できる販売店であること(58%)が高い割合となっている。この中で、"信頼できる販売店"というのは非常に重要な項目で、消費者に対し実質的に食品の情報提供を行っているととらえることができることから、消費者の安心感を高めるために、どのようにしたら信頼を得る販売店になれるかについて考えることが重要であると指摘した。

 また、消費者が食品に対し危険を感じるものをまとめてみると、食品添加物、残留農薬、残留動物用医薬品、環境汚染物質(ダイオキシン、水銀など)、輸入食品、遺伝子組換え食品、アレルギーを起こす物質、カルシウム・鉄分の不足、肥満などを助長する栄養素、食中毒菌などの病原微生物、寄生虫などであることを紹介した。

食品衛生に係る危機管理

 食品衛生に係る事故などを起こした場合、危機管理上の以下の重要項目について説明があった。

 (1)危機の判断

   まず、事故などがおきた場合には経営者に正しい情報を早く知らせ、そして経営者は危機を過小に評価しないことである。

 (2)冷静な対応

   消費者をはじめ行政、マスコミに対してはどのように説明するのか、また企業として販売店や流通に対してはどのように説明するのかを全体像を把握しながら客観的に説明することが肝心である。説明対象者によって説明が異なると不信を買うことにつながるので冷静な対応を心がけるべきである。

 (3)被害の拡大防止

   消費者の安全性を確保する観点から、被害の拡大防止対策を行い、被害を最小限に抑えることにより、消費者を危険から守ることを最重要課題としなければならない。

 (4)早期公表の判断

   被害拡大防止のためには、正確な情報を早期に公表することである。マスコミを拡大防止に協力してもらう関係にするという考え方で臨むべきである。

 (5)原因究明

   原因究明については、ある工場内の特定のセクションだけが問題と考えるのではなく、会社全体で原因究明を図るなどの措置を講じなければ再発防止策とは呼べない。

リスクアナリシス(リスク分析)について

 リスクを軽減し、回避するなど安全を確保するための方法論としてリスクアナリシスという手法が導入されている。これはリスクアセスメント(リスク評価)、リスクマネージメント(リスク管理)、リスクコミュニケーションという要素から構成され、生活を豊かで安全なものにしていくための取り組みである。

 このうちリスクコミュニケーションについては、信頼される情報の発信源、わかりやすい説明、そして全ての人に理解してもらう努力(理解してもらってはじめてコミュニケーションが成立)が重要である。

パネルディスカッションにおける質疑応答

 基調講演終了後、森田氏がコーディネーターとなり質疑応答などの意見交換が交わされた。

・質問:食品安全情報を横浜市のホームページで見ようとすると知りたい情報がなかなか見つからないことがあるので、どのような改善が図られているのか。

 回答:横浜市では昨年11月に消費者代表も交えた食品安全懇話会というものを立ち上げており、これらの意見を踏まえながら年末くらいまでにはホームページの内容を充実させたいと考えている。

・質問:食品の期限表示は具体的にどのように決めているのか。

 回答:期限に関しては原材料の耐久テスト結果や発売する季節などを勘案して決定しているが、商品の品質特性によるところが大きい。

・質問:最近、日持ちの良い食品が多くなってきたと感じているがその原因は何か。

 回答:日持ちがすることについては、主に包装技術の向上などによるものもあるが、製造工程管理や流通管理の向上による結果であり、食品添加物だけに頼ることが少なくなってきていることも一因ではないか。

 最後に、横浜市鶴見区福祉保健センター生活衛生課長が「横浜市鶴見区としてはリスクコミュニケーションに関するシンポジウムは今回が初めての開催であるが、今後とも質問や提言を積極的に発信していただき、行政に反映させていきたい」と結んだ。



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