近年、わが国の施設園芸を取り巻く環境は非常に厳しいものとなってきており、農業従事者の高齢化による栽培面積の減少や担い手不足、施設の建設や運営に関わるコストの上昇、技術的スキルの継承など、さまざまな課題が噴出している。これらに対処する方法として、ITや自動化技術の導入や、施設の大型化が進められており、環境モニタリングシステムを装備した次世代型園芸拠点が全国的に展開している
(1)。
高知県では、2016年に次世代型施設園芸高知県拠点(高岡郡四万十町)が稼働して以降、軒高2.5メート以上で耐風速35メートル/秒以上の環境制御装置を装備した次世代型ハウスが23年度で90.4ヘクタールに達し、広がりを見せている。また、CO
2施用(光合成を促進して野菜の収量を上げることを目的に、施設内の二酸化炭素の濃度を人工的に高めること)を中心とした環境制御技術の導入率は、「中小規模園芸ハウスを対象とした複合エコ環境制御技術の確立」(農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業、課題番号:24024、2012~2014)に関する研究をきっかけに、18年に県内主要7品目で50%と加速した
(2)。図1に高知県内のピーマン栽培におけるCO
2施用技術の普及状況を示す
(3)。
併せて、高知県では地域農業の核となる担い手の確保に力を入れ、地域と協働した企業の農業参入を支援しており、地域共同型の農業クラスターが県内10地域で形成されている。これにより、地元の人材を新たな担い手として雇用し、各地域の基幹品目の栽培面積や生産量の増加が図られている
(4)。
これらの取り組みのうち、本稿では、本山町施設園芸生産拡大プロジェクト(以下「本山プロジェクト」という)として行われた、「エフビットファームこうち」での先進的な取り組みを紹介する。