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食生活の中の冷凍野菜

ライフフーズ株式会社  代表取締役社長 安藤 幹雄



 冷凍野菜に私が出会ってすでに37年の歳月が流れた。
 わが国は農業生産、とりわけ米と野菜については生産技術、供給量とも世界でも有数の農業国であり、水産業においても近海はもとより7つの海を相手にする漁業大国であった。わずかに畜産、酪農の分野では先進するアメリカやオーストラリアあるいはヨーロッパの諸国に学ぶものを多く持っていた。

 このような環境のもとで、当時冷凍野菜の未来図を語ることは多少なりとも気おくれしたものである。
 しかしながら、昭和45年の大阪万博に世界各国のパビリオン内のレストランは、ポテトをはじめグリンピース、コーン、ミックスベジタブル、いんげん、にんじん、ブロッコリー、カリフラワー等の冷凍野菜を持込んで来た。

 折からの日本人の食生活の洋風化現象と軌を一にして、ファミリーレストラン、ファーストフードチェーン等の外食産業の台頭が始まる。そこでは冷凍野菜は不可欠のものであった。安定した品質、安定した供給、安定した価格、均一のメニューをスピーディにお客様に提供する上で、冷凍野菜は格好の素材であったといえる。昭和50年代に入り、それまでほとんどが業務用や学校給食中心に使用されていたものが、スーパーマーケットのショーケースの充実と共に家庭用に一気に普及するところとなった。

 今日(平成16年度)では国産9万2千トン、輸入品76万1千トン、全体で85万3千トンという市場規模になっている。平成16年度のイモ類と野菜の国内生産量が1617万トンであるから冷凍野菜のシェアはまだ生鮮の5%強にすぎないが、可食部分100%、利便性に加えて安定品質、安定価格、安定供給といったメリットを考えると、これからも生鮮野菜との使い分けにより家庭内、業務用での利用はまだまだ広がっていくと思われる。特に、昨年の10月、11月のような生鮮野菜高騰時の消費者の冷凍野菜への購買行動をみると驚くほどである。

 今後とも消費者ニーズに対応できる新しい野菜の商品化や植物性蛋白質としての豆類、またキノコ類等の商品化など機能性や効用を求めるユーザーの要望に応えてゆく必要を強く感じている。

 また、2002年春に始まった中国産ほうれんそうの残留農薬問題は冷凍野菜業界に大きなダメージを与えたが、これを契機に土壌分析に始まり、肥培管理、栽培管理、農薬管理から生産工程の管理を含めたトレーサビリティの仕組作りが着々と進められ、産官学の連携プレーによる冷凍野菜の安心、安全への課題とそのソルーションのための努力が続けられている。中でも2006年5月より実施される残留農薬のポジティブリスト制度については、使用農薬の管理、運用と同時に原料栽培から製品化までの検査体制の確立など、まだまだ大きな課題を抱えている。

 いずれにしても「健康」を基軸とするバランスの良い食生活のために冷凍野菜の果たす役割をしっかりと認識し、更なる需要の拡大に努めたい。



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