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視点



新たな流通を求めて

岩手大学農学部 農林環境学科 教授 木村 伸男



 近年、どこの地域を訪ねても、「農業の明日が見えない、どうすればよいか?」と尋ねられます。また、経済のグローバル化の進行、国際競争の激化の中で「何をやってもダメだ!」と諦めている人を多く見かけます。確かに、コスト計算で国際競争に立ち向かおうすれば、それは難しい。既に確立した大産地ならまだしも中山間地や兼業地帯での農業となると、そう簡単にはいかないでしょう。 

 そこで、国際競争、産地間競争の中にあってどうすべきか考えてみましょう。

 私は、中山間地域、兼業地域で農業を行おうとすれば、発想の転換が必至だと思います。具体的には、世界と、あるいは大産地と競争しない戦略(競争回避の戦略)を展開すること、従来と異なる産地育成と流通を目指すことが必要であると思います。

 これまでの産地育成では、特定の作目を決め、ひたすら規模・産地を拡大し、作型を分化させ、周年栽培を可能にし、品質の均一化に努めてきました。そして、均一な製品を多量、年間を通じて中央卸売市場に出荷し、量販店を通じて不特定多数の消費者に農産物を届けてきました。輸入農産物も不特定多数の消費者を対象にしています。

 ここでの特徴は、(1)生産者が特定の均一な製品を多量、(2)不特定多数の消費者へ、(3)一方方向の下で提供することです。

 こうした方法は、現在、中山間地や兼業地帯では不可能でしょう。そうであれば、考え方を変えなければなりません。具体的には、「特定の消費者にいろいろな作目をニーズに応じて提供する」という方法が有効でしょう。ここでのキーワードは、(1)特定の消費者、(2)双方向、(3)ニーズに応じた多様な製品、です。こうした方法は、既に、インターネットを利用した農産物の取引では行われています。

 現在、農産物の直売所は、全国的に開設され、伸びてきています。それは、道路脇にあることもあれば、「道の駅」などのように大規模に行われていることもあります。また、スーパーや生協などの中に開設されていることもあります。そこでは、農業者が、消費者と話合いながら取引を行っています。中にはそれを発展させ、注文を取って宅配を拡大している経営もあります。もちろん、そこではパソコンを有効に利用しています。

 今、こうした新たな流通が、静かに拡大しつつあります。



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