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野菜との出合い

財団法人食生活情報サービスセンター
理事長 渡辺 文雄



 もう二十数年前のことになりますが、農林水産省の食品流通局に在籍していた頃、農水省は米の生産調整が予定通り進まず困っていました。省を挙げて取り組んでいる生産調整に食品流通局としても何か役に立ちたいという思いが強くありました。当時の食品流通局は食品産業や流通問題が主な仕事で、所管する作物は、野菜だけでした。

 そこで、野菜の消費が増えれば、野菜が米の生産調整の代替作物として役に立つのではないかと極めて単純に考え、私なりに野菜の消費や生産動向等の勉強を始めました。そして、当時既に野菜の消費が毎年のように減り始めており、作付け面積も予想以上に減少していることに一寸驚きました。

 少し別の話になりますが、日本でも大腸ガンが急増中とのことで、そのことが野菜(繊維)の消費減と密接な関係があるのではないかという医学記事をたまたま見つけました。

 何とか野菜の消費を増やしたい、昔に戻したいと思い、野菜の消費減の理由を私なりに考えました。一応の結論は、消費者が野菜を食べるのはビタミンCを摂るためだと思い込み過ぎて、そのために野菜を生で食べようということで、野菜のサラダが流行り出したからだ、一寸勇気がいりましたが、野菜の消費が減ったのはサラダの消費が増えたからだ、サラダの消費が増えれば増える程野菜の消費は減る等とも言ったりしたものでした。

 勿論食生活の欧風化もその原因でしょう。一昔前のように煮たり茹でたりして沢山の野菜を食べることが少なくなり、そのために量としての野菜の摂取量が減ったのだと思います。そこで、野菜を食べるのは栄養的には繊維とカルシウムをとるためだ、従って煮たり茹でたりして沢山の野菜をとるべきだというようなことを大腸ガンの話等とからめてPRできないだろうかと考えました。丁度その頃米国でマクガバンレポートを契機に米国政府が米国民の食生活改善のための指針を作りました。1980年のことでそれが日本にも伝わってきました。私もそれを読んで本来個人の自由であるべき食生活について政府が具体的に改善指導を始めたことに新鮮な驚きを覚えました。

 これに刺激され日本でも、食生活と健康との関係を背景に、野菜の消費改善を行政としてやってみようと思い、野菜の種類別にそれぞれの栄養素(その中に繊維とカルシウムの項目も明示させて)の含有量を判りやすくするためホテルやワインの真似をして星の数で示した"ザ・ヤサイ"というカラー版の冊子を三冊作り、広く配布させました。役所主導でこの種のことをやったのは初めてだと思います。結構好評でした。

 今、日本型食生活が乱れ出し、日本政府も遅ればせながら食生活指針を作り、一方野菜についても独自の特別の予算措置を講じ、その消費改善運動が始まっています。今までになかったことと思います。これをチャンスととらえ、古い言葉ですが官民共同で野菜の消費改善をすすめ、日本人の健康寿命を延ばしたいものです。



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