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植物工場の野菜

キユーピー株式会社 代表取締役社長  鈴木  豊 

 植物工場で栽培された野菜が注目されています。適正な栄養を有し、無農薬で安全、輸入に頼らない、洗わずに食べられるなどの特長があるからです。日本では25以上の植物工場が稼動しており、弊社には福島県表郷村に三角のパネルで培養液を噴霧栽培する完全制御型の植物工場があります。そこでは、毎日4,500株のリーフレタスを生産しています。同じ生産システムの植物工場は現在、全国12ヶ所あり、サラダ菜、リーフレタス、フリルアイスなどの野菜が生産されています。

 植物工場で栽培される野菜の特長は、無農薬栽培で低細菌であること、成長が早く外葉も柔らかく美味しく食べられること、虫や泥などがつかないので洗わずに食べられること等です。その特長から、サンドイッチにも利用されています。また、天候に左右されず安定した生産ができ、冬に雪深いところでも、砂漠などの気象条件の厳しいところでも、サラダ用野菜を生産することが出来ます。

 弊社は連結ベースで食品を5つの事業領域に分類していますが、その一つに野菜とサラダ事業があり、その中核をなすのがカット野菜の販売です。カット野菜は袋から出せば直ぐに食べられる簡便性、捨てる部分がなく無駄がないなどの特長から市場は順調に拡大しています。カット野菜は北海道と沖縄を除き供給できる体制ができ、カット野菜を販売している全ての店に、植物工場で生産した野菜にブランドをつけ、カット野菜の隣に並べることも考えられます。

 夢が膨らむ植物工場では培養液の組成を変えることにより、人間に不足しがちなビタミンやミネラルを豊富に含む高栄養・高機能の野菜生産の可能性もあります。その実現こそが、カット野菜の隣にブランドつき野菜が並ぶことに繋がると思うのです。

 さらに、夢は膨らみます。これから数十年日本がかかえる大きな問題として、高齢社会への対応があります。人口構造を考えると活力ある社会を維持発展させるためには、高齢者が意欲をもって働き、生活していける場所を作る必要があります。色々なことが考えられますが、リタイアした人が田舎で農業を行う「定年帰農」の話もよく耳にします。しかし、それは誰にでもできることではありません。そのような環境を植物工場の活用で、都会で実現できないでしょうか。高齢者が増えた団地の近くに作られた植物工場、そこに徒歩か自転車で通勤する。工場内は快適な作業環境で、すくすくと育つ野菜が発する生命力をもらい、元気で働く高齢者。働く時間には自由度を持たせる。このようなことが実現できれば、高齢社会先進国として世界の注目を集めるだろうし、高齢者の健康維持にも役立つであろうと思うのです。



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