1 産地の概要

 越後中央農業協同組合(以下「JA越後中央」という)は、新潟県の中央部、日本海側に位置し、新潟市、燕市、弥彦村の2市1村からなります。同JA管内で栽培されているえだまめの数ある品種の中でも、「くろさき茶豆」と「弥彦むすめ」が特産品となっています。

 「弥彦むすめ」が生産されている弥彦村は、弥彦山脈にある越後一ノ宮の彌彦神社の麓にあり、弥彦温泉などの観光産業に恵まれ、稲作を始めブドウなどの果実やえだまめ、ブロッコリーなどさまざまな作物が生産されています。また、近年はチューリップやユリなどの切り花栽培にも取り組んでいます。

 JA越後中央弥彦営農センターでは、稲作からの転作作物として土壌水分に対する適応性が良いえだまめの栽培を約45年前から始めました。現在は32名の生産者が12ヘクタールの面積で、えだまめの極早生品種「弥彦むすめ」の栽培に取り組んでいます。長年の創意工夫により3つの作型を取り入れることで早期出荷を可能にし、新潟県で最も早い5月からえだまめの出荷を行っています。

2. 栽培カレンダー

 「弥彦むすめ」の作型は、ビニールハウス、二重トンネル、一重トンネルの3つに分類できます。最も早く出荷できるのは、ビニールハウスによる栽培で、2月上旬には種を行い、2月下旬に定植を行います。この作型では5月中旬に収穫・出荷します。
 次に出荷が始まるのは、二重トンネルによる栽培で、2月中旬には種を行い、2月下旬〜3月上旬にかけて定植します。この作型では、5月中旬〜下旬にかけて収穫が行われ出荷されます。
 一重トンネルによる栽培は、2月中旬〜下旬には種を行い、3月中旬に定植を行います。この作型では、5月下旬〜6月中旬にかけて収穫が行われ出荷します。
 「弥彦むすめ」は、これらの作型の組み合わせによって5月中旬〜6月中旬の間、切れ間なく出荷できる体制を整えています(図1)。

                            

図1 「弥彦むすめ」の作型

3. は種から出荷までの流れ

 1つの事例として、二重トンネルの作型のは種から出荷までの流れを①〜⑤の手順で紹介します。
①は種・・・育苗床には種されるえだまめの種子は、十分な地温を確保するためにビニールハウスの中で育苗されます。さらにビニールハウスの中には2月の厳しい寒さの育苗であるため、対策としてトンネルを設置して育苗します。
②定植・・・稲作後11〜12月にかけて畝立てを行います。除草剤を散布した後、マルチを張りトンネルを設置します。トンネルは強い風にも耐えられるように支柱に紐をかけて固定します。えだまめの苗をトンネルの中へ持ち込みマルチに開いた穴に一本一本手作業で植えます。

ビニールハウス内での育苗

トンネルの中での定植風

③生育管理・・・トンネルの中は温度が高いため雑草の生育が早く、草取りを頻繁に行う必要があります。また、トンネル内の温度管理が重要で、日々のトンネルの換気作業を怠るとトンネル内の温度が急激に上昇し、葉が焼け黄色や黒に変色し、出荷が出来なくなります。さらに収穫の1週間〜10日前に追肥を行います。こうしたことにより、えだまめの食味を向上させ葉を鮮やかな緑色に仕上げます。

④収穫作業・・・収穫作業は、鮮度を保つため気温の低い朝4〜6時頃に行います。トンネルの中央部で日光を一杯に浴びたえだまめは、生育が早いため早期に収穫を行います。トンネルの脇部のえだまめは、換気作業などにより中央部より温度が低下するため、2〜3日後に天候や生育状況を判断して収穫作業を行います。トンネル1列で栽培しているすべてのえだまめを同時に収穫できないため、根気のいる作業となります。収穫適期は2〜3日と短く、収穫が遅れると実が入りすぎて品質が落ちるため、効率の良い収穫作業が求められます。

トンネルの換気作業

えだまめの収穫風景

⑤調製作業・・・収穫したえだまめは、上部の葉を2枚残し枝の整理をします。実の部分は2つか3つの肉厚のマメを残してすべて掻きます。計量後、えだまめの実の部分が外側に来るように一本一本並べて花束のように巻き赤いブランドタグを付けて1把を作ります。これを5把まとめて1束として出荷します。葉や根を残すなど繊細な作業が求められるため、一連の作業はすべて手作業で行われ、生産者は手塩にかけて育てた自分の娘を嫁に出すように丁寧に調製して出荷します。

1把ごとに計量

「弥彦むすめ」を束ねる様子

4. 出荷の工夫

 「弥彦むすめ」は、出荷する時、葉付き枝付き根付きで出荷されるため、鮮度が保たれた状態で消費者の元へ届くのが特徴です。規格は500グラムで束ねたAS規格のみを出荷しており、選別された「弥彦むすめ」は、生産者自らが収穫した日の夕方に弥彦村井田地区にある集荷場へ持ち込み、プラスチックパレットのうえに山積みされます。えだまめは、鮮度を保つためにたっぷりと水をかけられ予冷庫で保管され、そのままラップで周囲を梱包して県内の市場へ出荷します。

AS規格の「弥彦むすめ」

弥彦村の集荷場

集荷場への搬入風景

プラスチックパレットに山積みされる「弥彦むすめ」

 県内市場を通して出荷された「弥彦むすめ」は、新潟市内のスーパーなどで販売されており、JA越後中央弥彦営農センターでは、試食販売などを行って販売促進を図っています。
 購入者の中には、「弥彦むすめ」の出荷を心待ちにしてくれている人もおり、そのような消費者の反応を見るのも楽しみの一つです。

5. えだまめ生産量を維持するための取り組み

 弥彦村野菜部会では、「弥彦むすめ」というブランドを守るため、枝付きえだまめにこだわっています。しかし、すべてが手作業の「弥彦むすめ」は、調製作業に長年の経験による技術が必要で手間暇かかるため新たに取り組みにくく、もぎえだまめを取り入れるなど栽培しやすい環境づくりを検討しています。生産者の高齢化が進んでいる中で、現在の生産者数をどのように維持していくかが、今後の課題となっています。

6. 生産者紹介

 「弥彦むすめ」生産者の丸山稔さんは、弥彦村野菜部会長をしています。丸山部会長は、すべてが手作業で行われる「弥彦むすめ」の生産、出荷作業を行う中で、最も大変な作業は2つあるといいます。
 1つ目は、2月の定植作業。弥彦村の降雪量はそれほど多くはありませんが、冬の外気はとても気温が低く寒いです。しかし、トンネルの中は気温が上昇しており、温かくなっています。トンネルの外内の寒暖の差が激しく、体調管理が重要となっています。
 2つ目は、日々の換気作業。えだまめの収穫期には、日が出れば換気をするためにトンネルの脇部を上げ下げしなければなりません。これを怠るとえだまめが出荷できない状態になります。この作業は、ほぼ毎日行い、雨の日でも日が出ると一瞬にしてトンネル内の気温が上昇するため、この時期は目を離すことができず日々の生活が制約されます。

「弥彦むすめ」のブランドタグ

「弥彦むすめ」の生産者
丸山部会長

7. 「弥彦むすめ」のおすすめの食べ方

 「弥彦むすめ」は、そのままゆでて食べると素材本来の風味が感じられます。もぎたてのえだまめをゆでる前には塩を振って、たっぷりのお湯で少し固めにゆでてザルにあけたら、もう一度サッと塩を振って、うちわや扇風機で手早くさますと、ゆで上がりの色が鮮やかになり、おいしくいただけます。

「弥彦むすめ」のゆで方のレシピ

 一言アピール

 「弥彦むすめ」の鮮度を保持して出荷を行うため、枝付きえだまめにこだわっています。数多くのえだまめが流通している新潟県内でも最も早い5〜6月の2カ月間、出荷されている初夏の風物詩「弥彦むすめ」の風味を是非、ご賞味ください。

 お問い合わせ先

越後中央農業協同組合 弥彦営農センター
住所:〒959-0305 新潟県西蒲原郡弥彦村大字矢作569-1
TEL:0256-94-4114
FAX:0256-94-4267

参考資料・写真提供:JA越後中央 弥彦営農センター

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