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年頭に当たって




新年のごあいさつ


独立行政法人 農畜産業振興機構
          理事長 山 本  徹


 平成18年を迎え、謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 平成17年の野菜の動向は、平成16年の台風など異常気象の影響と2月の低温による生育遅れにより出荷量が減少し、指定野菜14品目では4月まで平年を上回る価格水準で推移しました。4月以降は天候が回復したことと、6月に入ってからの気温の上昇と適度の降雨により、春ものが生育遅れを取り戻し、夏ものの出荷と重なったため、野菜の価格が急速に下落しました。このため、6月中旬から8月下旬にかけて、キャベツ、レタス、はくさいについて主要産地で産地廃棄が行われました。

 このように、天候の回復と、引き続き野菜の輸入が増加したことから、総体的に5月以降の野菜の価格は安値で推移しました。

 野菜の消費形態は、調理の簡便化志向、個食化の進展などにより、家庭で調理する割合が7割、加工食品、外食へのウエイトが3割となっています。輸入野菜はこのような業務用・加工用需要を中心に年々増加してきていることから、国産野菜も業務用・加工用需要に沿った生産・流通体制を整備することが特に重要です。

 一方野菜の消費をみてみますと、野菜は健康維持・増進に不可欠であり、近年では生活習慣病の予防などにもその重要性が指摘されており、厚生労働省の「健康日本21」では、成人1人当たり1日350g以上の摂取が望ましいとされています。しかし、野菜の摂取量は年々減少し、最近では285gと、望ましい摂取量を摂るためには現在より約2割多く野菜を食べる必要があります。また、総務省の2004年家計調査における、1世帯当たりの生鮮野菜の購入量は175kgで10年前に比べて12%減少しています。これは、核家族化、少子化、家庭での野菜を使った料理が減ったこと、さらに、若年層では、野菜から採るべき栄養素をサプリメント類、ジュース類から摂る傾向があり、これらが原因であると考えられます。

 このような野菜離れともいえる事態を改善するためには、子供の頃から、食べ物が生産現場から食卓にのぼるまでの過程の理解や親と一緒に調理を行うための体験等ができるよう、家庭、学校が連携していくこと、また、健康な生活を送る上での野菜の果たす役割を広く国民の皆様に理解していただき、消費の拡大を図ることが重要となっております。

 昨年3月には新たな「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定されました。その中では、平成27年度における生産努力目標として野菜の生産量を1,422万トンと見込み(平成15年度の生産量は1,286万トン:対15年度比110.6%)、これらを前提とした野菜の自給率の目標が88%(平成15年度の自給率は82%)とされました。さらに同計画においては、担い手の明確化と支援の集中化・重点化、経営安定対策の確立、環境保全に対する支援の導入など重点的に取り組むべき項目を明らかにしております。

 農林水産大臣から当機構に示された野菜業務の推進のための中期目標においても、担い手を中心とした生産・供給体制の確立、低コスト温室の開発・普及等による低コスト生産等が可能な競争力の高い産地の育成、消費者や実需者等の視点に立った加工・業務用需要への対応やより新鮮、安心で高品質な野菜の供給等に向けた取組の強化に資するよう実施することとされております。

 当機構としましても、以上のような諸問題の解決に資するよう、指定野菜価格安定対策事業、特定野菜等供給産地育成価格差補給事業、野菜の構造改革を支援するための野菜構造改革促進特別対策事業、契約取引を推進するためのセイフティーネットである契約野菜安定供給事業、野菜の生産及び流通に関する情報の収集、整理及び提供業務を全力で推進してまいります。

 特に、契約取引につきましては、年々増大する輸入野菜に対し国内野菜の需要を確保するため、契約野菜安定供給制度への積極的な加入促進や情報提供等、業務用・加工用を中心とする契約取引の拡大に向け積極的に取り組んでまいります。

 さらに、野菜の消費拡大、需給・価格の安定、生産振興のために、月刊誌野菜情報及び野菜ブックの発行等に関する情報提供業務の一層の充実を図っているところです。

 農産物を含む食品に残留する農薬については、食品衛生法により残留基準が設定されておりますが、平成15年5月の同法の改正によりポジティブリスト制度が本年5月までに導入されることになりました。

 ポジティブリスト制度とは、現在基準が設定されていない農薬等が人の健康を損なうおそれのない量以上に含まれる食品の流通を原則禁止する制度で、リストに掲載されていない農薬が検出された食品の流通が禁止されるというものです。

 残留農薬基準については、現行の基準がある農薬は、その基準を使用し、これまで基準のない農薬は、(1)国際基準であるコーデックス基準、(2)農薬取締法の登録保留基準、(3)米国、EU、豪州、ニュージーランド、カナダの基準を適用し、これらの方法を用いても基準値のないものには、一律基準値として0.01ppmを設定することとされています。こうした情報について、正確かつ迅速に提供できるよう、情報収集・提供業務の中で重点的に取り組んでまいります。

 また、国際情勢についてみますと、WTO交渉が進められるのと並行して、EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)締結に向けた動きが非常に活発化していることが大きな特徴です。

 WTO農業交渉については、わが国のような食料輸入国と多くの輸出国という対立だけでなく、先進国と途上国との主張が対立していますが、EPA・FTAは、シンガポール(平成14年11月発効)、メキシコ(平成17年4月発効)、マレーシアとの間で協定を締結するとともに、フィリピン、タイとの間でも同協定の締結につき大筋合意に至ったところです。

 WTO農業交渉、EPA・FTA交渉については、国民の食の安全・安心の確保、農林水産業の多面的機能への配慮、食料安全保障の確保などに留意しつつ、輸入国としての立場が反映される内容となるよう国を挙げて取り組まれています。

 このような情勢にあって、わが国は、世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展などを背景に、品質の良い農林水産物などの輸出を積極的に拡大しようとしています。平成17年4月に農林水産物等輸出促進全国協議会が設立され、平成21年にはその輸出額を倍増させる計画の下、官民一体となった努力が続けられています。その中で、野菜については北海道、青森県などからながいもの輸出が行われており、16年度の実績は、3,205トン、13億円(対12年度比205%)となりました。

 このような、山積する国際的課題に対応した海外情報収集体制を充実するため、当機構は、17年10月に国際情報審査役を新設したところです。

 以上のように野菜をめぐる情勢には様々な課題がありますが、当機構といたしましては、将来にわたり国産野菜の供給力の確保、自給率・国際競争力の向上を図り、消費者や実需者の多様なニーズに対応した品質・価格の野菜を供給するとともに、国民の健康向上を図るための正しい情報の提供を行うよう、的確に業務を推進してまいります。また、業務の執行、組織の運営に当たりまして今まで以上に効率性、透明性を確保しつつ、時代の要請に即応した業務展開を図り、農畜産業および関連産業の健全な発展ならびに国民消費生活の安定に努力してまいる所存です。

 今後とも、皆様方の格別のご支援、ご指導を賜れば幸いに存じます。本年が皆様方にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げまして、年頭のあいさつといたします。



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