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年頭に当たって




新年のごあいさつ


独立行政法人 農畜産業振興機構
          理事長 山 本  徹


 平成17年を迎え、謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 昨年は台風の相次ぐ襲来、新潟県中越地震の発生など天災が多発し、日本各地に大きな爪あとを残し、甚大な被害をもたらしました。罹災された方々に衷心よりお見舞い申し上げますとともに一日も早い復興を祈念しております。

 昨年秋は、9月から10月にかけて度重なる台風が日本に上陸するなどにより、各地の野菜産地に大きな被害を与え、10月下旬には、一時、野菜価格は平年値に比べ、レタス6倍強、キャベツ5倍強、はくさい5倍弱、指定野菜14品目で2.5倍弱と高騰いたしました。このため、当機構においても農林水産省の「緊急野菜供給対策」と連携し、ほうれんそう、こまつななどを対象とした軟弱野菜等生産出荷促進事業、キャベツ、きゅうり、だいこん、はくさい、レタスなどを対象とした並級野菜出荷促進事業を実施するとともに、ホームページなどにより、価格、需給などについての迅速な情報提供に努めて参りました。こうした対策と各方面の御努力により、現在、一部品目を除き価格高騰は沈静化に向いつつあります。

 わが国の野菜の供給は、生産農家の高齢化などが進行し、作付面積や生産量は減少傾向で推移する一方、輸入野菜が増加し、野菜の自給率も昭和50年頃まではほぼ100%であったものが、平成14年においては83%まで減少しており、国産野菜の生産・流通の構造改革を進めることが重要となっております。

 特に、野菜の消費形態は、調理の簡便化志向、個食化の進展などにより、家庭で調理するものより、加工食品や外食へのウエイトが高くなっており、このような業務用・加工用需要を中心に野菜の輸入が増加してきており、国産野菜の生産は業務用・加工用需要に対応して行くことが重要となっております。

 野菜の消費をみますと、野菜は、健康の維持・増進に不可欠であり、最近では生活習慣病の予防にもその重要性が指摘されており、厚生労働省の「健康日本21」では、成人一人当たり1日350グラム以上の摂取が望ましいとされています。しかし、野菜の摂取量は年々減少の一途をたどっており、現在の摂取量は一人当たり350グラムを約2割下回る285グラムにとどまっています。このため、健康な生活を送る上で野菜の果たす役割を広く国民の皆様に理解していただき、消費の拡大を図ることが重要となっております。

 当機構では、このような状況の中で、指定野菜価格安定事業、特定野菜等供給産地育成価格差補給事業、野菜の産地改革を支援するための野菜構造改革促進特別対策事業、契約取引を推進するためのセーフティーネットである契約野菜安定供給事業などを推進しています。特に契約野菜安定供給事業は、業務用、加工用を中心とする契約取引の円滑な推進に重要な役割を果たすものであり、増大する輸入野菜に対して、国内野菜の需要を確保するために、積極的な加入推進を図ることが必要です。

 さらに、野菜の消費拡大、需給・価格の安定、生産振興のために、情報提供業務の一層の充実を図っているところです。

 一方、野菜政策では、農林水産省において昨年来「野菜政策に関する研究会」が開催され、産地の将来像を明らかにした産地強化計画の策定、輸入にシェアを奪われている業務用、加工用野菜に対する安定供給を行うことのできる産地づくり、消費者に対する野菜の機能性などを明確に伝える取り組みの推進などの方向性が打ち出されるとともに、野菜生産における担い手について検討が行われています。

 また、国際情勢についてみますと、WTO農業交渉は、紆余曲折を経て昨年7月にドーハ・ラウンドの枠組み合意がなされました。この枠組み合意では、(1)貿易歪曲的な国内支持が多い国ほど大幅に削減を行う、(2)輸出信用を含む輸出補助金を期日を設けて撤廃する、(3)一般の品目は高関税ほど大幅に削減する階層方式を採用するが、各国が指定するセンシティブ品目は別の取り扱いを行うこととなっています。今年は、12月に香港で開催される第6回閣僚会議に向けて具体的な数値の入ったモダリティ(国内支持、市場アクセス、輸出競争などの規律の大枠)確立に向けて交渉が行われることになります。

 2国間の貿易協定である自由貿易協定(FTA)については、日本は既にシンガポールとメキシコとの間で締結しており、シンガポールとの協定は平成14年11月30日に発効し、メキシコは本年中に発効する予定となっております。現在、タイ、マレーシア、フィリピン、韓国との交渉が進められていますが、昨年11月には、フィリピンとの交渉が大筋合意し、チリとの間ではFTAに向けた共同研究会が設置されました。

 また、小泉首相と東南アジア諸国連合(ASEAN)十カ国の首脳との会談でFTAを核とする経済連携協定(EPA)の締結交渉を今年4月に開始することで正式に合意されました。

 今後ともWTO農業交渉、FTA交渉に当たっては、国内の農業改革との整合性を保つとともに、農林水産業の多面的機能への配慮、食料安全保障の確保など、各国が持つそれぞれの事情を踏まえた上での多様な農業が共存できるよう、慎重な交渉が進められるものと理解しています。

 以上のように野菜をめぐる情勢には様々な課題がありますが、当機構といたしましても、将来にわたって国産野菜の供給力を確保し、自給率の維持・向上を図り、国際競争に対応しつつ、消費者や実需者のニーズに応えた品質・価格の野菜を供給できるよう、機構の業務を効率的、効果的に推進していく所存であります。

 当機構は、一昨年10月、農畜産業振興事業団と野菜供給安定基金が統合し、独立行政法人として発足しましたが、発足以来1年3カ月、皆様方のご支援、ご協力により、順調に業務を進めることができたと考えております。改めて御礼を申し上げます。

 独立行政法人全体に対しましては、透明性の確保、一層の効率化などの観点から業務組織の不断の見直しが厳しく求められており、当機構におきましてもIT化の推進などによる効率的な組織業務運営に努めるとともに、時代の要請に即応した業務展開を図り、農畜産業および関連産業の健全な発展ならびに国民消費生活の安定に努力してまいる所存です。

 今後とも、皆様方の格別のご支援、ご指導を賜れば幸いに存じます。本年が皆様方にとって希望の持てる年となりますことをご祈念申し上げ、年頭のあいさつといたします。



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