情報コーナー (野菜情報 2012年3月号)


野菜の学校「日本の伝統野菜・地方野菜」
に取り組んで

NPO法人野菜と文化のフォーラム理事
「野菜の学校」事務局スタッフ 脇 ひでみ
(食生活ジャーナリスト・子どもの食育教室運営)


要約】

 NPO法人野菜と文化のフォーラムが主催する「食べておいしさを知る野菜の学校」(以下「野菜の学校」)は、一昨年より2年間、伝統野菜・地方野菜をテーマに講座を開き、大変好評を得てきた。受講生からは「野菜にこんな味があったのか!」「野菜の見方、食べ方が変わった!」と、驚きの声が上がっている。伝統野菜への取り組みは地域差が大きい。伝統野菜はその地の人々と共に生きてきた「地方の文化財」であり、再評価することで新しい食文化が育つ可能性を秘めている。

■野菜の学校「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座内容は盛りだくさん

◇伝統野菜で周年の講座カリキュラムを組める?

 まず、野菜の学校「日本の伝統野菜・地方野菜」の講座の概要をお話ししよう。
 野菜の学校は、毎年4月〜翌年3月を1期として、毎月第1土曜日の午後1:00〜4:00、東京・秋葉原駅前の青果物商業協同組合ビルの一室で開講している。おととしから2年間にわたっては、一地方の、できるだけその時期の伝統野菜・地方野菜を数種取り上げている。受講生は45名。簡単なキッチンが付いた会場は、毎回、和気あいあいながらも熱気あふれる雰囲気に包まれる。授業は主に、以下で構成している。
①その地の専門家の講義(気候・風土、伝統野菜の現状と今後など)
②料理研究家、管理栄養士による当日の品目の栄養素や調理に関する話
③大田市場「東京青果」の講師による東京市場での取り扱い実績などの野菜情報
④基本的な伝統野菜1種と類似の他地方産やハイブリッド種などとの食べくらべ
⑤当日の伝統野菜を生かした料理の試食
⑥グループに分かれ、受講生の意見交換
 伝統野菜といえば、京都や加賀がよく知られているが、それらを筆頭に、全国各地で伝統野菜を見直す動きがある。地産地消で産地の野菜直売所が活況を呈しており、その地方独特の食文化が注目されていることも後押ししているようだ。
 当初、毎月のテーマとして該当する地域があるかどうかが懸念されたが、活動に地域差はあるものの、別表のようにこの2年間のカリキュラムを実施することができた。

 周年のカリキュラムを組むに際して、日本の伝統野菜が夏場と秋から冬にかけて偏ってあることも痛感した。できるだけ、その地の伝統野菜の旬を紹介したいと願っても、会場の都合から毎月第1土曜日と日程が決まっているため、時期的な制約が大きい。南北に長い日本とはいえ、毎月の初旬に、どこかに、ある品数、バランスよく伝統野菜があるわけがない。京都や加賀など、伝統野菜のバリエーションがありそうな地域を端境期のテーマにせざるを得ない事情もあった。
 そうして毎月のテーマを決めても、品目が予定通りにそろうことはまずないのが、伝統野菜ならでは。生産者がごく限られていたり、既に栽培をやめていたり、収穫時期も限定され、収量が少ない、しかも気候の変動を受けやすい。ここ数年の異常気象もあって、毎月の開講直前は、品ぞろえに向けてまるで綱渡りだった。
 とはいえ、受講生の期待に応えないわけにはいかない。各月、その地の野菜を紹介してくれる講師の多大な協力もあって、充実した内容だったと自負している。

講座風景

教室中央には伝統野菜がズラリ

◇「貴重な体験で野菜観が変わった」受講生たち

 これまでの受講生は、市場・流通・小売り関係者、生産者、種苗・育種関係者、試験場などの研究機関、メディア関係、食育関係、料理研究家、公務員・会社員など多岐にわたっている。近年話題の野菜のソムリエの資格をもつ者も多い。この2年間継続して受講する者は半数近くにのぼっている。受講生は、体験したことを野菜関連業務に生かしたいという意向はもちろんだが、伝統野菜そのものの未知の力に魅せられている面もあるようだ。
 野菜の学校恒例の食べくらべでは、「おいしい・まずい」の表現はタブー。各自で食べくらべ、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記す。その後、グループに分かれて意見交換の後発表タイム。司会は、メディアなどで活躍中の農産物流通・ITコンサルタントの山本謙治氏やスタッフが担当する。中身の濃い意見交換タイムは受講生に好評だ。
 みんなお待ちかねの伝統野菜料理の試食もある。10品前後の料理が揃うテーブル前に並んだ様子は、まるで定食屋さん?と、毎回互いに苦笑する。
 伝統野菜は外観がそろわず、素朴でダイナミック、味は濃く、エグミやアクなどがありがちだ。野菜自体の主張がしっかりあるとも言える。日頃食べ慣れているはずだった野菜とは違うパワーに、驚く声が多い。受講生の年齢によって、例えばなすやかぶ、大根など、F1種を中心に食べて育ってきたかどうかで、味わい方、受け入れ方が変わる傾向もある。意見交換は、自分の味覚を振り返る場。少し緊張しながら、どこかワクワクした表情も見てとれる。
 講座では毎回アンケートをとっているが、そこにいつも寄せられるのは、例えば次のような声だ。
<'10年11月 山形庄内>*幻の庄内野菜をたくさんいただき、貴重な経験でした。*かぶの世界観が広がった! もっと見直して食べたい。
<'11年2月 青森>*こんなに個性ある野菜があるのかと、改めて驚いた。
<'11年5月 奈良>*大和まなを食べて、同系のアブラナ科の野菜でこれほど違うとは思わなかった。*伝統野菜が生まれる背景、土壌を知ることができた。
<'11年6月 愛知>*瓜を比べる機会はなかなかないので、真剣に向き合う時間だった。瓜にこんな差があることが新鮮だった。
<'11年9月 兵庫>*知らない野菜がたくさんで、在来野菜の奥深さに気づかされた。*なすを食べくらべて、いかに千両なすに慣れてしまっているか気づいた。
<'11年10月 鹿児島>*さつまいもを6種も食べくらべたのは初めて!贅沢だった。
<'11年11月 宮城>*青菜の食べくらべで、ずっと青汁のような後味が残った。味が濃い。昔の人はおいしい野菜を食べていたのか。季節ごとに青菜の味が変わるのを楽しんでいたのでは。これだけ味が濃ければ、しっかりごはんのおかずになる。
<'11年12月 滋賀>*これだけさまざまなかぶを食べられたのは貴重な経験。いかに万能種に慣れているか痛感した。*ますます野菜に対する興味が出た。種を取り寄せて、ぜひ栽培してみたい。
 もともと、野菜体験が多い受講生だが、それぞれの立場で野菜観が変わってきていることが実感できる。

食べくらべのトレー(かぶは縦切りと横切りで比較)

毎回約10品の伝統野菜料理を試食

グループ単位で意見交換する受講生

山本謙治氏の司会で意見発表&情報交換

◇初体験の伝統野菜を提供する舞台裏

 野菜の学校を運営するスタッフについても触れておきたい。校長は元農林水産省で野菜行政に長く関わった大澤敬之氏。運営に携わる事務局6人と調理班5人のスタッフは、青果業、園芸研究家、管理栄養士、料理研究家、フードコーディネーター、食ジャーナリストなど、それぞれ本業を別にするボランティアである。NPO法人野菜と文化のフォーラムの会員のほか、これまでの野菜の学校卒業生や独法職員もいる。もちろん野菜大好き人間たちだが、スタッフにとっても、「日本の伝統野菜」講座は貴重な勉強の場として、各自の興味・体験・情報を持ち寄って、内容の充実を図っている。
 文献やネットで調べるのはもちろん、各県のアンテナショップの訪問、テーマ地域の伝統野菜を食べさせてくれる店に出向いて試食もする。時には、講座の前に生産地を訪ねるスタッフもいて、講座当日の報告は、受講生にも好評だ。
 調理スタッフにとっても各伝統野菜は初体験のことが多いので、どのようにして食べくらべ・試食用として提供するかは、毎回、頭を悩ませるところだ。シンプルなキッチンで、講座当日の午前中約2時間ですべての調理を終える体制なので、綿密な打ち合わせが必要になる。制約と、貴重な伝統野菜の持ち味を生かすことのせめぎ合いだ。
 野菜の上下、内外で味わいが違う、縦切りと横切りでは食感・味わいが違う、火の通し加減、塩加減、調味・料理法等々、試行錯誤が多い。また伝統料理だけでなく、今に通じる新感覚の料理も工夫している。当日の講師に「火の通しすぎ」などを指摘されることもあるが、新鮮な食べ方を喜ばれたり、何より、受講生に毎回大好評なのが励みになっている。

伝統的な料理(大阪しろ菜の煮びたし)

新感覚の料理(庄内からとりいものチーズグラタン)

修了式はベジタブルパーティ

■各地の伝統野菜の復活・再生を担う人々

◇伝統野菜復活のしくみ作りと調理人の重要性

 各地の伝統野菜の認定条件は、それぞれ地域で異なる。昭和20年以前から栽培されていることが条件だったり、京都のように明治以前だったり、また、栽培エリアや栽培方法などの条件もいろいろだ。各地の現状に接してみると、掘り起こしや既にごく限られている生産農家への支援、情報発信、流通経路の創出などに大きな地域差がある。ブランドを確立している「京野菜」は各地から別格の評価だったが、ここに至るまでのここ30年近くの間に、官民学一体で栽培から消費までを支援する体制を苦労して作ってきたことがわかった。
 しかし、どの地域も京野菜のようになることを目指せばよいというものではない。活発に活動している地域には、それなりのリーダーがいて、その地に応じた方向性を探っている。この2年間、そういう方たちの話をうかがえた体験はすばらしいものだった。
 群を抜いて注目されるのは、山形庄内の伝統野菜。活動の柱になっているのは、山形大学農学部准教授で山形在来作物研究会会長でもある江頭宏昌先生で、研究を通した裏付けや情報発信、足しげく農家を訪ね、流通ルートを模索するまで支援体制を作ってきている。庄内にあるイタリアンレストラン「アル・ケッチャーノ」のシェフ、奥田政行氏の活躍に負うところも大きい。奥田シェフは在来野菜の持ち味を最大限生かした料理をはじめ、今や世界レベルで知られる料理人だ。両者の出会いで、庄内の豊かな伝統野菜は一気に知られることになった。
 庄内の例が端的だが、伝統野菜の復活・再生には、調理人がいるかどうかがとても重要な分かれ目のようだ。伝統的な調理だけでなく、今の味の傾向にフィットさせるセンスがあれば、伝統野菜は新しい野菜として再登場することも可能だと知った。

庄内の江頭宏昌先生の講義

◇各地で担うのは、柔軟で強力なリーダー

 庄内以外でも、各地で個性豊かなリーダーが伝統野菜の再生のために多彩な活動を繰り広げている。
 例えば、江戸・東京野菜復活の立役者ともいえる大竹道茂氏は、JA中央会在職時の「江戸東京野菜ゆかりの地」の説明板設置に尽力したことを契機に、地誌を紐解き、種を探すところからフットワーク軽く活動している。今やメディアを駆使した情報発信力にも定評がある。
 大阪なにわの伝統野菜の森下正博氏も、大阪府の食とみどりの総合技術センター時代から取り組み、目下はなにわの伝統野菜応援団として、「無理せず、楽しく、長く続ける」ことをモットーに、食農教育にも活躍中だ。元鹿児島県農業試験場場長だった田畑耕作氏は、自分で調理法も工夫しながら伝統野菜の発掘・紹介に努めている。
 加賀野菜(石川県)の普及を担った(株)小畑商店の小畑文明氏、長岡野菜(新潟県)の元長岡中央青果(株)会長の鈴木圭介氏は、青果の流通の立場から伝統野菜の再生に奔走してきた。もとはといえば、NPO法人野菜と文化のフォーラムの中心的存在で、野菜の神様ともいわれた故・江澤正平氏の薫陶が大きいそうだ。
 ひときわユニークだったのは、兵庫の伝統野菜の山根成人氏。家庭菜園で種の重要性に気づいたところから伝統野菜にたどり着き、種と種採る人を発掘、応援する「ひょうごの在来種保存会」をつくって活動している。「伝統野菜の醍醐味は名前をつけるおもしろさ!」と、八ちゃんなす、ハリマ王にんにくなど、愉快な名前を披露してくれた。
 まだまだ講師紹介をできないのが残念なほどで、ぜひHPを参照いただきたい。

広報用のハッピ姿での講義も(京都の太田義久氏)

◇自治体などの取り組みは、伝統野菜プラスαの位置づけ次第

 ここ2年間で接した自治体やJAなどの取り組みについても、少し触れておきたい。事務局として取り組む際、各県の農業担当セクションやJAに連絡することが多い。近年は伝統野菜担当を設けているところが増えているものの、活動内容は格差が大きく、概してそう活発とはいえない印象だ。地域のイベントの際には注目しても、継続は難しいという傾向もあるようだ。伝統野菜がその地にどの程度残っているかが、今となっては大きな要素。閉鎖的な地形だったり、いわば近代化から取り残されがちな地域のほうが可能性が高いのは、ある意味では皮肉なことに思える。
 この間活発な印象を受けたのは、奈良県のプロジェクト。大和野菜を文化財的に位置づけ、地域の活性化につなげたり、経済効果が上がる野菜という農政の成功モデルにしたいと、意欲的なヴィジョンを進めている。また、長野県は信州という土地柄に愛着を強くもつ県民性もあって、官民学一体の信州伝統野菜認定委員会を設け、すでに60種近くの伝統野菜を発掘・認定。種と栽培方法の継承を綿密に行っている。寒さがきびしく、雪深い青森県は、冬の農業で働く場を作ることも急務で、多彩な伝統野菜栽培を支援する。新幹線開通を機に観光資源としても位置づけたい意向だ。
 伝統野菜栽培・流通は、農政全体からすればごく傍流なので、伝統野菜のプラスαの要素をいかに重要視するかで取り組みが変わってくるだろう。

門外不出の青森の大鰐温泉もやし

信州の王滝かぶは庄内の温海かぶの近縁

■伝統野菜はその地の歴史・文化を物語る

◇種が旅して伝統野菜になるロマン

 「種は人と一緒に旅をする」とは、何人かの講師に聞いた言葉だ。
 江戸・東京の大竹氏によると、かつて江戸は、参勤交代で全国各地の大名に同行した百姓たちによる田園都市でもあった。そこで種の交流があり、全国に種が散ったという。鹿児島の田畑氏からは、山川大根の元は練馬大根という話もあった。お国替えで殿様に付いて種も移動し、伊予の赤かぶが滋賀の蛭口かぶに、滋賀の夕顔が栃木に行き、今や栃木のほうがかんぴょうのシンボルになっている。宮城の長なすは博多のなすを持ち帰ったという。信州の野沢菜は元々天王寺蕪で、京都に修行に来た僧が種を信州に持ち帰ったものの、葉っぱばかりが立派になったというのは有名だ。お伊勢参りの土産として持ち帰られた種も各地に散った。婚姻の際に娘に持たせた種もあった。種は手軽で貴重な手みやげだったことは容易に想像がつく。金沢の金時草、熊本の水前寺菜、沖縄のハンダマは同じ伝統野菜だが、その旅路を知りたくもなる。
 もともと、日本列島にあった野菜はせりやわさび、ふき、山ごぼうなど数種しかなく、全国のほとんどの野菜は、いつかどこかから運ばれ、その地を生育環境として適応できたものが生き残ってきた。野菜自身がその地に適応しようとする中で、個性を獲得してきたのが伝統野菜といえるだろう。各地のかぶや大根は象徴的で、その多彩さには目を見張る。大根めしで知られるように、各地の飢餓を救った野菜たちでもある。
 それら伝統野菜は遺伝資源として貴重で、今後の育種に有効なことはいうまでもない。さらにその栽培方法にも教えられることが多いという。庄内の江頭先生は、焼き畑で栽培する藤沢かぶや宝谷かぶに出合い、焼くだけでチッ素やリンができて作物の生育がグンとよくなるという合理性に、先人の知恵を知ったそうだ。

焼き畑で栽培される庄内の宝谷かぶ

金沢:金時草 熊本:水前寺菜 沖縄:ハンダマ

◇その地の人々と共生して生き残ってきた

 根付いた伝統野菜を、その地の人々なりの知恵と技で調理・加工して食べてきた。今のように年中野菜が出回るわけではない以上、漬けたり、干したり、煮しめたりという保存に各地なりの工夫が見える。伝統野菜のかぶは総じて皮が固く、繊維がしっかりした果肉なので、そういう加工に向いている。逆に、だから選抜されて生き残ったという面もあるだろう。いずれにしろ、野菜は人々と共生して生き残ってきたわけだ。
 毎回の講座で各地の話をうかがい、伝統野菜を味わってみると、一連の物語、その地の豊かな食文化があることがわかる。それらを絶やすのは、あまりにもったいない。伝統野菜を手がかりに、地域の食文化を見直す試みは、各地の講師が進めている。
 特に、次世代につなげるために、地元の農業高校での栽培指導、小中学校に出向いての食農教育は広がっている。宮城では、仙台白菜の復活・普及をめざして「みんなの白菜物語プロジェクト」が展開されている。なにわでは、大阪府内の小学校の総合学習として、田辺大根は36パーセント、天王寺かぶらは33パーセント、勝間南瓜は6パーセントで取り組まれており、紙芝居や絵本にもなっているそうだ。
 伝統野菜は神社の祭りとつながっていることも多い。滋賀には「芋くらべ祭り」や「青物祭り」があり、なにわでは「勝間南瓜祭り」が復活したと聞いた。大竹氏は亀戸大根の栽培を復活させ、地元の小学校で子どもたちが栽培したものを亀戸の香取神社の祭りに奉納する年中行事を定着させた。この祭りで神社に来た老若男女は、亀戸大根入りの熱々の汁をふるまわれ、大根を1本ずつもらって帰る。家庭でもきっと話題が広がるだろう。

亀戸の香取神社の祭り 大根を奉納

亀戸大根入りの汁がふるまわれる

■伝統野菜を再評価するしくみを作る

◇普及より、地域限定の野菜に

 各地の伝統野菜の現状を知ると、生産・流通に関してはまだまだ不安定な面が多く、とても楽観できる状況ではない。栽培に手間がかかる、収量が少ない、作っても食べる人がいない、不ぞろい・不安定なので流通に乗りにくい等々、普及を阻む要素はいくらでもある。一般の農家以上の後継者不足で、伝統野菜リストに挙がっていても既に消失している例が少なくなかった。また、特にアブラナ科の野菜などは、交雑が進んで「どれがどれだかわからなくなっている」といった事態もあった。伝統野菜はその地ならではのもので、栽培環境を変えると元のものはできないとも聞く。
 伝統野菜の今後を模索する時、普及ではなく、その地の人たちの食を豊かにする方向で生産・流通・消費を安定させていくのがよいと、講座を進めながら考えるようになった。大消費地に運ぶのではなく、その地に行って食べる野菜と位置づける。各地を訪れる楽しみができようというものだ。

◇健康によい伝統野菜をPR

 ただ、スケールメリットを追求しないゆえに、いわば地方の文化財としての保護、それなりにもうかる仕組み作りが必要だろう。後継者作りも含めた栽培支援、地場での流通整備、そして何より食べるファンを作らなければならない。
 伝統野菜は味が濃いものが多く、辛みやエグミがあったりすることもあるが、だからこそ健康にいい機能性成分を多く含む可能性がある。京野菜の栄養素分析では、ミネラルなどの栄養価に富み、発ガン抑制成分であるイソチオシアネートなどの機能性成分が多いという結果が出たそうだ。最近の野菜は、辛みやエグミ、臭いなど、野菜独特の持ち味を品種改良で失いがちで、甘く、やわらかくといった傾向がある。時に旬の伝統野菜を食べて、味覚を鍛え、その幅を広げることも提案したい。
 こうしたPRを大いにして、親が食べることで、やがて子どもが受け入れていく。子どもたちにとって、年に1、2回、旬がはっきりしている伝統野菜を食べる経験は、自分のアイデンティティにもつながる大事な要素になるのではないだろうか。在来の伝統野菜が、そこに住む人たちのつながりを支え、まさに食文化を豊かにしていくことが期待できる。なにわの森下氏のモットーである「無理せず、楽しく、長く続ける」方法を、各地の官民学でぜひ進めていただきたいものである。


 野菜の学校は、その地ならではの伝統野菜・地方野菜を目の当たりにし、味わえる貴重な場であると同時に、登場した各地域にとっては、受講生の反応が次のステップにつながると、大変評価されている。各地の代表的な伝統野菜と普及しているF1種を食べくらべることなどにより、伝統野菜だけでなくF1種の知識の習得、今後の野菜の振興にも役立っていると自負しているところである。また、当日はもとより、毎回ホームページにアップしている講座内容は、各地の伝統野菜の公告塔の役目も果たしている。
 野菜の学校では、各地の情報交換がより活発になる手助けができるように、この4月から引き続き「続々 日本の伝統野菜・地方野菜」を開講する。カリキュラムは下表のとおりで、受講生を募集中である。ぜひ、ふるって参加いただきたい。
 また、一昨年8月、東京・有楽町に全国各地のなす44種を集めて「日本全国なす自慢!」を開催し、大好評を博した。こうした、全国の伝統野菜が会する企画も温めているところだ。

●野菜の学校の活動について、詳しくは以下のHPをご覧ください。
http://www.yasaitobunka.or.jp/index.html


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