情報コーナー


冬野菜の効能について

女子栄養大学栄養クリニック
准教授 蒲池 桂子


要約

 冬を旬とする野菜の効能について、だいこんにはカロテン、ビタミンC、植物繊維が含まれていることからがんや心疾患の予防に効果があり、ねぎは刻んでのどに湿布することによりせき止めやのどの腫れ、痛みの緩和に効果がある。また、はくさいは食物繊維を多く含んでいることから胃腸の動きを活発にする効果があり、ほうれんそうは動脈硬化を予防するビタミン類が含まれている。さらに、ブロッコリーには抗がん物質であるスルフォラファンが多く含まれている。

はじめに

 冬野菜の色彩イメージは、葉物類と根菜類、そしてきのこなどの緑色系、白色系、茶色系が主流です。春や夏に比べると地味な色彩ですが、一度にたくさん食べることができる鍋料理や汁ものなど、野菜を煮込んでその味覚を楽しむ調理法は、冬だからこそ味わえる楽しみ方です。料理から立ち上がる湯気からは、味わい、温かさが伝わり心を豊かにします。そして鍋料理、芋煮会、すき焼き、シチューなど、冬のコミュニケーションの中心にも野菜料理は欠かせません。さらに一つ上をいく健康に役立つ情報を知っておくと、冬に起こりがちな健康障害を未然に防ぐことができ、また、その対策にもつながります。身近な野菜でちょっとした体調の変化は乗り越えられます。

だいこん

 原産地は地中海沿岸から中央アジアといわれており、シルクロードを通って日本に伝わったと考えられています。春の七草の一つで‘すずしろ’ともいいます。品種が多く、蕪(かぶら)のような丸形の桜島だいこんや聖護院だいこん、世界最長の守口だいこんは長さ120センチにもなります。また、辛味だいこんは辛み成分が強く、水分が少ないのが特徴です。現在一般的に出回っているのは青首だいこんです。赤丸二十日だいこんは、青首だいこんの原種といわれています。

(葉に含まれる物質と効用)

 だいこんの葉は、小松菜などの葉物類と同様に、緑黄色野菜としても利用できます。カルシウム、カロテン、ビタミンC、それから食物繊維を含むため、がんや心疾患の予防効果があります。また、だいこんの根にはビタミンCが多く含まれ、抗酸化、抗菌作用、風邪の予防、疲労回復、肌荒れの解消につながります。

(根に含まれる物質とおいしい食べ方)

 だいこんの皮には毛細血管を柔軟に保ち、皮膚に栄養を運んで潤いを与えるとともにビタミンCの吸収を助ける、いわゆるビタミン様(ビタミンに似たものの意味)の物質であるビタミンP(ヘスペリジン)が含まれています。最近の研究では、ビタミンPは花粉症などにも効果があることが分かっており、切干だいこんなど、だいこんの皮をそのまま使用した料理が花粉症対策に見直されてもよいのではないかと思います。そのほか、消化酵素ジアスターゼ(アミラーゼ)は大変有名ですが、でん粉の分解・消化吸収を助けることから、胸焼けや胃もたれを予防します。そのほかの酵素としては、酵素オキシターゼが消化酵素として働くほか、発がん性物質の解毒作用があり、焼き魚の焦げ目に含まれるトリプP1などの発がん性物質を無毒化するといわれています。ただし、酵素は熱により破壊されることから生のままで食べるだいこん下ろし、特に辛味だいこんなどの利用で効果を発揮します。サラダとしては、千切りにしただいこんにフレンチドレッシング(酢1、サラダ油3、塩は酢の5分の1の割合)と細かく砕いたクルミやすりゴマをかけただいこんサラダはサッパリとしているので、こってりとしたお料理に合わせてみるのもよいでしょう。
 だいこん下ろしは、下ろしてから20分後にはビタミンCが80パーセントに減少してしまうといわれています。食べる直前に作るのが理想です。だいこんには食物繊維も豊富なので、便秘解消にも効果があります。だいこん下ろしの辛みは辛子油といわれるアリルイソチオシアネートによるものですが、この成分ががんを抑制し、抗菌性もあるのです。しっぽの部分の辛みは、細胞破壊が細かいほど辛くなります。

(初期の風邪への効果)

 せきやたんを切り、初期の風邪に効果的なだいこん飴の作り方ですが、だいこんの皮をむかずに、1?2センチ角に切り、はちみつに漬けて半日程度してだいこんが浮かんできたらだいこんを取り出し、冷蔵庫で保存します。また、腹部膨満感、げっぷ、便秘にはだいこん下ろしを食べてみましょう。口の中に炎症がある場合には、だいこん下ろしでうがいをします。声が枯れるときは、だいこん下ろしの汁としょうが汁を併せて飲むとよいでしょう。

ねぎ

 原産地は中国西部またはシベリアといわれており、日本には奈良時代に伝わったと考えられています。関東では土を寄せて白い部分を多くした根深ねぎが、関西では葉ねぎが好まれています。

(ねぎに含まれる物質と効用)

 ねぎは白い部分にビタミンCが多く含まれており、緑の部分には緑黄色野菜に含まれているカロテン、カルシウム、ビタミンKなどが含まれます。ねぎ特有の刺激臭はアリシンです。これはビタミンB1に多く含まれ、豚肉や豆腐、みそ、もやしなどと一緒に食べると体の中で本来水溶性であったビタミンB1がアリシンと結合してアリチアミンという物質になり、脂溶性に変わります。そのために体に停滞しやすくなり、ビタミンB1の効力を持続することができます。ビタミンB1は糖の代謝に必要で、肩こりやイライラ、不定愁訴(主観的で多岐にわたる自覚症状)などの解消に効果があり、体の中で代謝されずに残った燃えかすを上手にお掃除してくれるビタミンの一つなのです。 
 ねぎを裂くと粘液が出てきますが、この粘液は多糖類といって糖の一種です。また、人間にとってはエネルギーとはならない難消化性の食物繊維であるセルロース、ヘミセルロース、プロトペクチン、水溶性の食物繊維であるペクチンも含んでおり、腸を刺激し、便秘の解消につながります。そのほか、ブドウ球菌、連鎖球菌などに対して抗菌作用が認められています。血行を良くすることから、頭痛には生ねぎを細かく刻み、生みそを少々入れて熱湯を注ぎ、これにしょうが汁を入れ、熱いうちに服用すると効果があるといわれています。さらに、風邪の初期にはねぎを2本ぐらい刻んでかゆに入れて煮たものを熱いうちに食べ、発汗を促すとよいでしょう。ラーメン屋さんでは、ぜひチャーシューとねぎがたくさん入ったメニューを選んでください。ラーメンの汁で血圧が上がりそうな方には、生ねぎを細かく刻んですまし汁に入れるだけでも効果はあります。そのほか、刻んだねぎをタオルに挟んでのどに温湿布するとせき、不眠症、のどの腫れや痛みに効くといわれています。

はくさい

 はくさいの原種は中央アジアあたりに生息していたアブラナ科の植物といわれています。日本へは、日清、日露戦争後に中国東北部から伝わったといわれています。日本では結球するものが一般的ですが、結球しない山東菜もはくさいの一種です。英語でチャイニーズキャベッジといい、東洋の代表的な野菜の一つです。

(はくさいに含まれる物質と効用)

 葉にはカルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンCが豊富に含まれています。食物繊維を多く含んでおり、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にします。エネルギーが低く、鍋などに入れると一人で一度に200グラム程度は食べることができるため、こういった微量栄養素の摂取源としては侮れないのです。カルシウムも100グラム中に43ミリグラム含まれており、200グラム食べれば、緑黄色野菜並みの86ミリグラムを摂取できます。また、アブラナ科に広くみられるイソチオシアネート化合物が含まれ、発がん物質の活性化を抑える働きをします。また、発がん物質の一種で、魚などのタンパク質の焦げに含まれている亜硝酸アミンを吸収し、蓄積を防ぐ働きをするモリブデンが含まれています。また、亜鉛や葉酸など貧血の予防になる微量栄養素も含んでいます。

(はくさいの部位別調理法)

 はくさいは、外側の大きな葉の部分はスープ煮やクリーム煮に、中間あたりの縮れた葉と白い葉脈の部分の割合のよいところを鍋物や炒め物、ゆでて和え物に、内側の縮れた葉の多い部分は酢の物や千切りにしてサラダにするなど、部位によって調理方法を変えてみると料理がおいしく仕上がります。
 健康維持の視点からは、低カロリーで淡白な味のため、どんな味付けにも合い、低エネルギーなので冬場のダイエットにはかかせない野菜です。また、食物繊維も多いことから、胃腸の調子を整え、便秘解消に効果が期待できます。食物繊維は善玉腸内細菌である乳酸菌などの餌となり、便の状態もよくなります。さらに、カリウムが多く含まれるので、水分代謝改善やむくみの改善にもつながります。

ほうれんそう

 原産地は西アジアのイランあたりといわれており、日本には江戸時代に中国から渡来しました。

(ほうれんそうに含まれる物質と効用)

 カロテン、鉄、葉酸、カルシウム、ビタミン類が豊富に含まれています。カロテンは体内でビタミンAとなり免疫機能を維持する働きがあります。ほうれんそうにもいろいろな種類がありますが、一般には冬どりほうれんそうの方がビタミンCの栄養価は高くなっています(図1)。
 また、水耕栽培により生産され、葉にえぐみを感じることなく生で食べられるサラダ用のほうれんそうもあります。シュウ酸などの灰汁が少なく、ほかの栄養素も一般のものとあまり変わらないために好評です。一方、寒じめほうれんそうといって、12月から2月の間、寒冷気にさらした葉の縮れたほうれんそうを見かけます。これは、寒さにさらすことがほうれんそうにとってストレスとなり、ビタミンCやE、カロテンを増やすことで寒さから身を守っているのだそうです。そのおかげでほかの時期に出回るどのほうれんそうよりもこれら栄養素の含有率が高くなり、また糖度も上がっておいしくなるのだそうです。

ほうれんそうのビタミンC含有量

 これらほうれんそうを品種や調理法を変えて飽きずに食べ続けることにより、動脈硬化を予防するビタミン類を摂取することができ、高血圧や脂質異常症、動脈硬化による心疾患の予防に役立ちます。

(貧血予防の効果)

 また、ほうれんそうには貧血予防としての効果もあります。鉄分不足により赤血球が普通よりも小さい鉄欠乏貧血の予防につながる鉄分、赤血球が普通よりも大きくなってしまう巨赤芽球貧血の予防につながるビタミンB群の仲間の葉酸やビタミンB12など、赤血球をつくる成分がほうれんそうには含まれています。

(結石を防ぐ調理法)

 サラダ用に改良されたほうれんそう以外は、生のままだと結石のもととなるシュウ酸石灰が多いことから、ゆでることをお勧めします。減塩を気にする方も塩を加えたお湯でゆで、流水によくさらして食べると、塩分に含まれるミネラル類がシュウ酸石灰などの灰汁を流出させやすくします。塩分の気になる場合は、さらによく水にさらしていただくと塩分も流れ出します。ほうれんそうは、さまざまな料理に利用でき、食卓には欠かせない野菜の一つではないかと思います。

ブロッコリー

 ブロッコリーは、地中海沿岸の野生のキャベツ(ケール)を起源とするといわれています。カリフラワーの原型とされ、明治の初期から末期、大正にかけて日本にもたらされました。しかし当初は、カリフラワーの消費が伸びブロッコリーはあまり注目されませんでしたが、昭和40年代以降、食の洋風化の中で緑黄色野菜として注目されるようなりました。

(ブロッコリーに含まれる物質と効用)

 ビタミンC、カロテン、鉄、食物繊維が多く、茎部には糖分が多く、甘くておいしいために今や消費はカリフラワーを追い越してしまいました。ブロッコリーには特にアブラナ科の植物に特有の抗がん物質であるスルフォラファンが多く含まれています。これは胃腸内のピロリ菌を減らすことでも注目された物質です。またビタミンB群に含まれる葉酸も大変多く含まれています(図2)。葉酸は、貧血予防、痴呆症予防、心筋梗塞の予防などに関わる重要な栄養素です。特に妊娠中に不足すると、胎児の二分脊椎症の危険性が高まることが報告されています。

1食当たり50g摂取した場合の充足率

(おいしい食べ方)

 ブロッコリーを毎日の食卓に欠かさないことで、葉酸の摂取不足は解消することができます。欧米ではブロッコリーを生でサラダとしても食べているようですが、前日にゆでて作り置きをしておくと、朝の忙しい中、朝食として手軽に50グラム程度の生活習慣病予防用の野菜として摂取できます。手軽で食べやすく、塩ゆでにしておくとマヨネーズやドレッシングなども必要ないことから、単身赴任や一人暮らしで朝から野菜を食べるのは苦手な人にもお勧めです。また、栄養素は、つぼみの部分よりも茎の方に多く含まれているので、茎も捨てずにゆでたり、太めの千切りにして炒めると甘みもありおいしく食べることができます。
おわりに
 以上、冬の代表的な野菜5種類についてその効能を紹介しましたが、もう一度食生活を見直していただき、冬野菜の持つ効力を日々の生活に生かし、おいしくて健康な冬をお過ごしください。


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